マジで? とリムルは己の手を見る。見慣れた姿だが、テンペスト商事の課長になってからは一度もできなかった事ができている。
魔素不足で不可能だった擬態である。
なんでなんでと頭を捻っていたら、大賢者が回答してくれた。ベニマルの射精した液体から魔素を抽出してリムルに供給したらしく、その結果魔素不足を多少補えたのでスキルの行使が可能になったとのこと。但し、抽出できた魔素は少量のみだったので、子供サイズにしかなれないこと、持続時間も数分程度であることを説明された。
大賢者はあのよく分からない危機状態でもリムルの求めに応じようとしてくれたらしい。頼りになるもののいないこの奇妙な世界で唯一頼りにできるのは大賢者だけだな、とリムルは感動した。
さて、ベニマルが起きない内にスライムに戻ろうと思ったのだが、人間態が久しぶり過ぎてちょっと余韻に浸ってしまいたくなった。シズから受け継いだこの姿をリムルはかなり有効活用していて、主に人生を楽しむ為にも円滑なコミュニケーションのためにも利用させてもらっている。だから、人間の姿になれないのはかなり不便だったので、取り戻せたことに感動してしまうのだ。
そういうわけで、ベニマルの目覚めに気付かず、ベニマルを大混乱させる羽目になった。
「リムル課長、スライム以外の姿にもなれるんですね」
「諸事情で普段は出来ないんだけどな」
男の精液から抽出した魔素で擬態してますなどとは言いたくないが、ベニマルから搾り取れるだけ搾り取って今後の為に魔素を溜めておきたい。チャンスは逃すと二度とやってこないものだ。幸い、ベニマルはまだ正常な判断ができる状態ではなさそうなので、押し切れば魔素を限界まで奪取出来るかもしれない。
「それにしても、ベニマル君、朝から元気だね?」
「あっ、ちょっ、見ないで下さい!」
布団を剥いでやれば、ベニマルの下半身が見えた。昨夜も思い知らされたが、中々に立派な逸物である。人間だった頃の己のサイズを思い出し、リムルは素直に負けを認めて、その立派なものを搾り取る為に手を伸ばした。ベニマルはそんなリムルの行動に混乱している様子だったが、リムルが擦り寄って、体をぴたとくっつけながら物をこすり始めると、慌てて離れようとした。
「こらこら、俺に委ねろって」
「ななななんでですか?!」
「上司から部下への労りみたいなもんだよ。大丈夫、俺の手、すべすべだから気持ちいいだろ?」
不慣れな様子からまだこういうことの経験がなさそうと分かって、リムルは面白がりながら耳元で囁き、誘惑する。スライムの体の便利なところは、口からでなくても捕食できるところだ。手で扱いて出せるものを出し尽くしたら手から吸収すればいい。
先端をぐりぐりと刺激しつつ、袋もさわさわと触る。ベニマルはまだ頭が状況に追いついていないようだったが、喘ぎ声を出しながら、リムルの与える刺激に耐えている。
「我慢するな、出せよ」
「でもっ、課長の手に出すなんてっ、やば、うっ」
「いいから、ほら……ベニマルの、くれよ」
その一言でベニマルは我慢できなくなったらしく、びゅっと精液を吐き出した。一滴も漏らさぬように全てスキルで捕食する。やはり、微量しか摂取できなかったが、魔素は回収できた。それでも一日中、いや、せめて半日でも人間の姿でいたいのなら、もっと大量の魔素が必要である。
朝からいきなり訳のわからない状況で上司に翻弄されたベニマルはベッドに倒れ込んでいるが、まだ物は元気そうであった。賢者タイムなど与える隙もなく、刺激し続けても大丈夫そうだ。
効率面から考えて、人の姿のまま行為を続行していたら、無駄に魔素を消費するだけである。リムルはスライムに戻って、ベニマルの腰の上に移動した。昨日はよくも押し付けやがったな、とリムルは悪い笑みを浮かべて(スライムなので表情など分からないが)、ベニマルのもの全体を先端から根本まで包み込んだ。そうして、全体を絶え間なく刺激して、漏らすことなく全てを回収すれば、魔素を浪費せずに溜めることができる。
ベニマルはリムルの行動の突飛さに半ば意識を失いつつあったようだが、あまりの事で声を抑えることもなく、嬌声を上げている。男のこんな声を聞きたいわけじゃないんだけどなあ、とリムルは魔力感知を遮断して、体内で暴れまわるベニマルのものを締め上げ、突き、撫で回して、もう出ないというところまで追い詰めた。ベニマルには悪いが、リムルにとっても死活問題なのだ。酒でも甘いものでも恋愛相談でも何でも付き合ってやるから、魔素をくれと、本能に従って搾り尽くす。
ベニマルはかなり若々しくて精力にあふれており、搾り取るまでにかなり時間がかかった上に、刺激が強すぎて泣きじゃくったり口を開けっ放しにしていた所為か、ベニマルの顔がとんでもないことになっていたので、それも全て捕食してやり、リムルはもう一度人に擬態してみた。持続時間を優先したのでまだ子供サイズだが、数分から数十分に伸びたので、ベニマルの犠牲は無駄ではなかった。まだ1時間に満たないから、それは魔素を節約しつつ、後日ベニマルから魔素を奪うしかないかな、などと酷いことを考えていると、後ろから体を引っ張られた。
「今の、何だったんですか……?」
「うーん、サキュバスのマネ」
「はあ?」
「いや、何、諸事情で人間の姿には普段なれないんだけど、ベニマルの精液からとあるものを抽出したら、できるようになってさ」
「ええ?」
「ごめん、これからもちょいちょい貰ってもいい? 生死を分ける問題っていうか、かなり切実なんだよね」
人間の姿で上目遣いで擦り寄って可愛くおねだりすればチョロいだろうとリムルは甘く見ていたが、ベニマルは意外にもリムルから体を離して、土下座した。
「すみません! それは、それだけは……その」
そういえば、好きな人がいるとか言っていたのを今更思い出した。どこにそんな優良物件がいたのかと未だに思っているが、ベニマルはとにかくその相手が好きなのだから、傍から見れば上司の情人になるのは嫌だろう。
「ああ、そうか、好きな人いるんだっけか。悪いことしたな、ごめんな、ベニマル」
「いえ! そうじゃなくて……」
「ん?」
「俺は、リムル課長が好きなんです」
リムルは宇宙猫のような顔でベニマルを見た。ベニマルはこんなタイミングで言いたかったわけではないと悔しそうな顔をしていたが、それならそれで、何故リムルのお願いを断ったというのだ。
「好きだから、リムル課長の助けにはなりたいんですが、こんな事されたらもっと好きになって、いつか課長の迷惑になっちまう……。課長は俺の事、好きとは思ってないでしょう?」
案外、ベニマルは冷静に状況を把握し、理解している。リムルはベニマルを部下として可愛がるつもりはあっても、恋人にしたいとか好きだとか、そういう気持ちは一切ない。己のワガママのために部下を消費しようとしていただけだ。
クズである。
うわあ、とリムルは自分の問題にばかり気をやりすぎていたことに気づいて自分に失望した。
魔素がなければ生きていけないのに、この世界では魔素が薄すぎて、リムルは無自覚に魔物の本能に従いすぎてしまったらしい。恐らく、こんな形で誰かから魔素を摂取できるなど知らなければベニマルの気持ちを蔑ろにするようなことを思いつきもしなかっただろう。
「ごめん、俺が悪かった……本当にごめん」
「いえ、でも、かなり切実なんですか?」
「気にするな、ベニマル。自分で何とかするし」
「他のやつと寝るんですか?」
「いやあ、それは……」
ベニマルが駄目だとしたらソウエイかゴブタ、いや、体液という条件ならシュナやシオンもありだし、ヴェルドラのチョロさなら何とかなりそうな気もするが、そんなのを今ベニマルの前で言えるわけがない。ただ、ベニマルは全然誤魔化されるつもりがないらしくて、じぃっとリムルを見ている。
「他のやつに取られるくらいなら、俺が付き合います」
「でも……」
「いいんです。リムル課長の力になれるなんて、光栄なことですし」
リムルの罪悪感は限界に来そうだった。昨夜の出来事はベニマルが寝ぼけていたからだが、今朝の失態はリムルの理性がなかったからだ。それをベニマルに背負わせるなんて、流石にやばい。人としてやばい。スライムだからって許されない。
「それに、いつか好きになってもらえるかもしれない。俺はそれに賭けます。だから、課長、俺を選んで下さい」
うわっ、とリムルは目を瞑ってしまいたかったが、それは最も許されない行為だと己を奮い立たせて、よろしく頼むとだけ返した。
とにかく、朝食をとり、リムルの事情を詳しく説明する。といっても、魔物の国の盟主だとかではなくて、単純にベニマルの精液を求めた理由だけだ。ベニマルはなるほど、と呟いた。
「その、キスとかは……効果ないんですかね?」
ベニマルはこの状況を利用してリムルとイチャイチャしたいらしい。確かに昨日利用されるだけじゃなくて利用しろと言ったが、それは会社とか社会制度のことだぞと思いつつ、ギブアンドテイクでなければ宜しくないとリムルも腹を決めて、キスも試してみることにした。
人の姿に擬態して、ベッドに腰掛けるベニマルに抱き上げられ、その膝に乗せられる。かなり小さな子供の姿なので、何も知らない人から見ればベニマルが幼児に性的なことをしているような状況だ。事案にしかならない。絶対に見つかりたくない。なので、外は明るいが、カーテンは全て締め切ってもらい、明るいと恥ずかしいからと照明もつけてない。
カーテンで遮断できない明るさの中で、ベニマルがリムルの小さな唇に口付ける。ファーストキスは先程食べたハニートーストの味だった。餃子とかじゃないから許そう。
唇だけが触れ合うだけでも、そわそわして仕方がなかったが、ベニマルの舌がリムルの口に侵入してくると更に落ち着かない気分になった。ベニマルはそんなリムルの身体を強くないながらも、しっかりと抱き締めているから、腰が引けても逃げられない。角度を変えて、歯列をなぞられ、舌を絡まされ、口内を舐め尽くされる。与えられる唾液からは精液よりも微量な魔素が検出されたので、リムルはベニマルの唾液を飲み込み、求めて、ベニマルに抱きつく。
こんなに魔素を求めることになるなんて思ってもみなかったが、前の世界では無尽蔵にあったエネルギーがなくなったせいで、本能を制御しきれないのかもしれない。
ベニマルはリムルの魔素を求める動きを察知したのか、より一層深く口付けてくる。息が荒くなり、腰を引き寄せられて、服越しに先程リムルが弄んだものを押し付けてくる。というか、また復活したのかと驚きを隠せない。若さって怖いと37歳童貞は恐れ慄きつつ、呼吸の限界までキスを続ける。
口だけでするセックスという感じで、ベニマルが酸素を求めて口を離すまで続いた、1ミリたりとも距離を作らせないと言わんばかりの激しさに、リムルはくらくらした。若い男を誑かす悪い大人になるつもりはなかったのに。こんなに愛情を苛烈に表現されても、リムルはベニマルを好きになる予定なんてないのだ。早くこの悪夢から目覚めたい。
「効率だけで言えば精液の方がいいな」
「そうですか」
「因みにベニマル的にはどうしたいとかあるんじゃないの?」
「えっ、そりゃ、その、ほら……よくあるやつというか……」
顔を赤くして口籠るが、要するに男女のセックスと同じ体勢でしたいということだ。しかしリムルは女でも男でもないので、性器がない。受け入れるものがなければどうしようもないが、リムルのワガママにつきあわされているベニマルの要望はできるだけ聞き入れておこうと思う。好きになる予定はないけれど、大切にしたくない訳ではないのだ。考えた結果、股間部分だけ限定的擬態解除をすることで、女性器の真似事はできるのではないかと考えた。
試してみると案外それらしくなって、ベニマルに見せてやると、ガン見された。触られても何も感じないのであるが、ベニマルはかなり昂ぶって、指で弄り始めた。仕方ないのでタイミングを見て、ちょっとそれっぽい声を漏らすと、ベニマルは理性を吹き飛ばしたらしく、いきなりなんの断りもなしに腰のものを挿入してきた。何も感じなくて正解であると確信するくらい、凄い腰の動きでベニマルが快感を求めてリムルに挿入している。人気男優になれるよと声を掛けてやりたいくらいだ。女を抱くときは速さが大事なのではないといつだったか読んだ記憶があるのだが、正常位でこれだけ動かれるとちょっとした恐怖である。ただ、先走りなんかも魔素に変換できそうとの事なので、体内に流れてくる全ての液体を魔素へと変えていく。大賢者は少量の液体から最大限魔素を抽出できるよう、解析してくれているので、こんなに頑張ってもらう必要がないようにしたい。
ベニマルが射精すると、捕食者で一気に全てを回収した。ついでにベニマルのものに付着している分も吸い上げるとベニマルが驚いていたが、そんなのには構っていられない。
とりあえず、一度落ち着いたので、スライムに戻ったら、もう昼だった。何事だと何度か時計を見直したが、どう見ても昼飯時だったので、昼食もベニマルの世話になってしまった。始発で帰りたいと思っていた昨夜の自分はどこに消えたのだろう、とリムルは流石に呆然としていたが、どうもこうも、己の生命維持に必要な活動をしていたのだから仕方がない、と言い聞かせた。
ベニマルにはこの事は他言無用と伝えた。ベニマルも社内恋愛については妹の見ていたドラマで多少学習していたらしく、言い触らしませんと断言してくれた。ゴブタとかにバレたら鬱陶しいし、ヴェルドラやミリムの反応もあまり考えたくないので、ベニマルの返答には安心した。
因みに体内残留魔素量は1時間23分くらいなら小さな子供に擬態できる程度になった。
