スライムが伴侶らしいことを考えてみた話

「そういえば、リムル様とベニマルさんって伴侶になって何か変わったんすかね?」
 ゴブタの素っ頓狂な言葉にリムルは一瞬、何を言っているんだと返しそうになったが、ふと冷静になれば、確かに何か変わったと言える程の大きな変化はないと気付いて、何かする必要あるのか、という疑問に至ったが、そんなことをゴブタに相談しても詮無いので、「まあお前みたいなお子様には分からん話だよ」と適当に誤魔化した。
 さて、ベニマルとの関係は自らが公表する前に何故かバレてたので、何やかんやで勝手に認められてしまうというありえない経緯で伴侶になっているのだが、実はきちんとした手続き等はしていないため、ベニマルは現在自称伴侶なのである。リムル自身に伴侶など出来ると思っていなかったために魔物連邦国国王の伴侶に関する法的な定めが一切ないことから起きていることなので、これは伴侶になったのに何も変わっていないことの一つだと言えるだろう。
 調べたところ、この世界のどこの国を見ても王の配偶者には政治的権限はなく、単なる名誉のある地位程度の扱いであるようだった(だからか、既に軍事的権力を握っているベニマルが国主リムルの伴侶になったことで軍事政権になってしまったのではないかと邪推されているらしいが、完全に偶然である)。
 無論、ブルムンド王国のように夫婦で国を運営している所もあるが、権力は王にある。だから、一応のけじめとして法的な定めを決めて、他国にもベニマルがリムルの伴侶であるということを認めさせる必要があるのだが、今すぐとはいかないような状況であった。
 それでは、そういう国主と伴侶という観点以外で二人の関係で何か変わったことがあるかというと、精々ベニマルが以前よりももっと自信に満ち満ちていて、落ち着きが出たくらいのものだ。これはよくある「所帯を持つと男は落ち着く」というものだろう。ただ、所帯と言える程の時間を過ごした記憶はない。なにせ、国主としてあちらこちらで仕事をしているリムルはベニマルとの夜を過ごす以外は中々時間を取れない。ベニマルも軍事のトップとして忙しくしているので、仕事で顔を合わせることは多くても、世間一般のようなデートだとかは全然していない。
 いや、以前より夜に誘う頻度が増えて、二ヶ月に一回程度が一ヶ月に一回程度になった。これはベニマルもリムルも体力の限界が遠すぎて延々と夜を過ごせるため、ヤり過ぎてしまうことが理由であった。流石のリムルも毎晩は飽きるし、ベニマルが多分保たないのと、期間が空くことでより楽しくなるというのもある。要するに複合的な要因の結果、今の状態に至るわけである。
 さて、伴侶らしい事といえば、多分デートだ。性活は恙無いのだから、それ以外といえばデートくらいしか思いつかない。いや、指輪とかも大事だろうか。思い返すと何もプレゼントを贈っていないが、ベニマルはリムルに何かを求めているのだろうか。とりあえず、指輪とデートくらいで何かプランを立ててみるか、とリムルは結論した。
 指輪はドルドに相談するのが良さそうである。魔鋼塊は胃袋にたくさんあれど、加工して指輪の形にするとなるとリムルの独力では失敗しそうなので、素直にプロに頼むのがいいだろう。デザインについてはベニマルにも意見を聞いておくべきだろう。大学時代の友達が、良かれと思って選んだデザインをかなり貶されて落ち込んでいたのを思い出す。結婚指輪なんて毎日身につけるものなのにゴツいなんてありえないとか、男の手には似合うけど女の手には似合わないとか散々言われたらしい。結局面白みのないシンプルなものになったとくだを巻いていたので、ベニマルはそこまで口煩くなかったとしても、意見は聞いておかないといけないかな、と思った次第である。
 デートは正直言って生前の知識がまるで役に立たないため、お手上げである。何せ、基本的には対女性の戦術であるからして、ベニマルには適用できない(そもそも経験があるのかと問うのは野暮である)。食事や飲みに行くことはよくあるので、今更やっても伴侶らしい行動にはならない気がした。手料理を作るという選択肢は最初からない。独身サラリーマンの男飯など、シュナの芸術的な腕前の前には霞んでしまうので、その兄貴に食わせるほどのものにはならない。精々、ベニマルが好みそうな甘味のある店に連れて行くくらいだろうか。
 まあ、ベニマルもリムルも寿命の制限などないに等しいのだから、まだまだ時間はたくさんある。試行錯誤して、ベニマルが喜びそうなことを知っていくしかないのだろうし、それこそが楽しみの一つなのだ。焦る必要はない。

 ということで、丁度時期も良かったので早速ベニマルを部屋に呼びつけて、指輪とデートの相談をしてみた。指輪については、刀を握ったりするため、シンプルなデザインの方が良いだろうとなったので、よくあるダイヤモンドを嵌めるというデザインもなくなって、単なる輪っかにしか見えないものになったが、その代わり、魔法を刻印して身につけていると得するようなものにしようということにはなった。効果についてはドルドも交えて話し合うことにしたので、今夜の指輪に関する談義は終わりである。
 デートについては、そもそも二人とも多忙なのでオフのタイミングは調整しないと何ともならない。視察なんかはある程度日程を動かせるので、渉外関係さえ何とかなれば、時間は作れそうだった。そもそも、リムルは仕事は程々にして生きていきたいと常々願っているのに、この国の魔物達ときたら、衣食住が保証されているから給料はいらないし、休みも求めていないなんていう、日本企業では間違いなく使い潰されていただろうと思われるような、勤勉すぎる労働者たちなので、リムルは休日について言い出しにくいのである。今後も頑張って休日という概念の啓蒙活動に励むしかないのだろう。
 とまあ、話し合いが終わると、リムルとベニマルはベッドの上に向かい合って、互いに見つめ合う。今回は一ヶ月半ぶりだ。リムルからベニマルの首に腕を回すと、ベニマルはリムルを抱き寄せてキスをした。最初は唇同士が遊び合うだけだが、次第に舌を絡ませて、貪り合うような深いキスをする。ベニマルが舌を吸ってくるのが気持ちいいし、興奮する。ベニマルとの関係も長くなったが、リムルを喜ばせる為のテクニックがかなり豊富かつ高度になっていくのを常に感じるのも楽しいのだった。
 その内、互いの服を脱がせあって、横たわるベニマルに尻を突き出すように跨ると、ベニマルが舌と手で穴をほぐし始めた。両手で尻の肉を割り開かれて、くちゅくちゅと音を響かせながらベニマルの舌がリムルの体内に入ってくる。焦らされているような錯覚がリムルの期待と興奮を徐々に高めていく。ただの穴ではあるが触覚を関連付けさせているので、リムルはベニマルに翻弄されながら、絶頂までの階段を登っていく。あとは享楽に落ちるだけだ。
 達して恍惚に浸るリムルをベニマルは四つん這いにさせて、尻の間でベニマルのものを擦ってきた。なんだかんだで、ベニマルも尻は好きらしい。しっかり揉みながら、穴にじわじわと入れてくるので、リムルは思わず早くと急かしてしまう。全てがぶっ飛ぶような心地よさを知ってしまっている以上、羞恥も何も捨てて素直になるべきだし、ベニマルも願われたのならと嬉々としてガツンと挿入してきた。
 ベニマルが入ってくる、この瞬間は歓喜に満ちる。
 肉体的には無性になったとはいえ、リムルは男としてこれまで生きてきたのに、と思わないでもないが、ベニマルがリムルを好きで好きで堪らないのだと感じる瞬間であり、なんとも言い表せない幸福感と安心感に包まれることが好きなのだと結論した。
 ベニマルのサイズと好みにカスタマイズされた穴の奥に当たる感覚がリムルの理性を剥がしていく。ベニマルのリズムに合わせて翻弄されていくのもまた、奇妙な被支配感をリムルに与えて、興奮させてくるのだ。前からならある程度リムルも自分の意思を介入させることができるが、後ろからだと完全な受け身になる。ベニマルの腰の動きだけが全てだ。
 一度射精すると、ベニマルはリムルを横たわらせて、覆い被さるようにキスをしてきた。バックの時には見えない、ベニマルの興奮しきった幸せそうな顔を見ると嬉しくなって抱きしめてしまう。セックスって幸せだなと実感させられる。こんなに充足感を得られる娯楽は他にはない。それもこれも、拙いながらも激しいベニマルの恋があればこそ、リムルはこれ程までに幸せなのだ。
 だからか、最近はベニマルのこの反応が可愛くて仕方がなくて、単なる好奇心とはまた別にベニマルに喜んでもらいたいと思うようになった。大体、この行為はベニマルから与えられることばかりで、リムルからはキス以外積極的にすることがあまりない。フェラは断られたので、それ以外でベニマルを喜ばせられるものがあるかどうか考えている最中だ。大人のビデオでは女が男の乳首を舐めることもあったから、そういう事をやればいいかなとは思っている。
 射精後の落ち着きは、キスのせいで段々と薄れて、もう一度昂ぶったベニマルが精液で溢れるリムルの中を味わい始めている。腰の動きが徐々に早く、激しくなる。リムルはキスの時からベニマルに回していた腕でベニマルにしがみつき、腰に足を絡ませる。そうでなければ精液で滑りすぎて抜けてしまいそうになる。それはそれで面白いのだが、今は突っ込んだままでいてほしい気分なので、ベニマルの名を呼びながらしがみつく。ベニマルは絶頂に至る寸前、リムルの腰を抱き上げて浮かして、ぐぐっと腰を入れてきた。そのいきなりの動きでリムルの中に更に入ってきたので、誰にも聞かせられないような嬌声をあげてリムルはベニマルのものを締め上げると、ベニマルは射精してしまった。
 乱した息を整えつつ、触れ合うだけのキスをして、一度身を離す。ベニマルが抜けていく感覚にすら敏感に反応して、高い声が少し漏れる。ベニマルとのセックスで、段々女の子気分どころか本当に女の子になってしまっているのではないかと危機感を抱いているのだが、ベニマルの表情を見ていると、女の子でもいいかもしれない、なんて惑わされてしまう。こんなに惚れ込まれて愛情を見せつけられると、リムルの性自認など些細なことではないかと思わされる。
 伴侶にしてほしいと言われた時点ではそんな事を考えもしなかったというのに、リムル自身気付かなかったが、案外形から入るというか、ロールを与えられたならその通りに動いてしまうタイプなのかもしれない。つまり、好きだと言われた時点ではそこまでなかった愛情が多分芽生えつつある。付き合っていくうちに好きになるパターンだ。
 成る程、照れるな、とリムルは冷静に考えて、とりあえず好きという今の気持ちに慣れない内は黙っておこうと決めた。感情の赴くままに動いたら失敗することは分かりきっている。しかし、思った以上にベニマルに対する気持ちが膨らんでいて、うっかりすると何かしでかしそうだ。
「リムル様? 何か気になることでも?」
 リムルは何気なく声を掛けたであろうベニマルを見つめる。精悍な顔立ち、太い首、逞しい体、大きな手、立派すぎる男性器。何をとっても好きになるはずがない要素ばかりだ。世の中には同性を好きになる人もいるが、自分はそうではないと何となく思っていて、恋人は可愛い女の子を夢見ていた。なのに、今はベニマルを見ているとにやにやと口元が緩む。先程は言わないほうがいいと判断したが、だめだ、言ってしまいたいし、そうしなければ溢れ過ぎて辛い。
「いや、お前のこと好きだなあって思っただけ」
 全身で愛情を示して注いでくれる相手がいるなんて、幸せ過ぎる。生前が恋人関係に恵まれなかったから、余計にその喜びが大きくなる。仕事も充実していて、友達もたくさんいるという状況はサラリーマン時代と変わらないが、ベニマルがいるということだけでこれだけ幸福度合いが違うなんて、ベニマルは凄すぎる。
 ベニマルはリムルの言葉に驚いたらしく、「えっ」と固まった後、顔を真っ赤にして、それから少し涙目になった。
「やっぱ、お前って泣くほど俺が好きなの?」
「いや、これは、違うッ! あ、違わないんだが、その、好いた相手に同じように思われる事がこれだけ嬉しいなんて思わなかったんだ。必ずしも報われるわけじゃないからな」
 ベニマルを想う女達は全員報われなかったことになる。そう言われると、確かに確率の低い話になるのだろう。そもそも、リムルだって衆道だなんだと言われなければ、今頃ベニマルの正妻戦争に茶々を入れるだけで、ベニマルを伴侶にしようなんて想像もしなかっただろう。幸せは危ういバランスと奇妙な偶然の積み重ねで成り立っていたらしい。
「まあ、始まりがちょっと特殊だったから不安にさせたりもしたけど、俺はお前のこと好きだよ」
 ここで「だからずっと一緒にいようね♡」とは言えない辺り、行為の最中なら捨てられる恥はやはり理性とセットで素直になるのを邪魔してくるらしい。それでも、ベニマルはリムルの言葉に感激して、痛いくらいに抱きしめてくれた。
 あとは指輪とデートさえクリアすれば、それなりに伴侶らしいことをしたと言えるかな、とベニマルにキスしながら思うのだった。