SuckとFingerを命じた恵は案の定、先端や裏筋を丹念にあるいは執拗に舐め回し、吸い上げ、時には甘噛されながら、アヌスを指でかき回され、腸壁の襞をぬちゅぬちゅと触られ、前立腺を刺激されることで、全身を真っ赤に熱らせながら快楽で泣いている。
命じられた通りに恵のペニスをしゃぶりながらアヌスを緩めている宿儺は早く褒めてほしくて仕方がなかったが、同時に褒めるのを忘れるくらい快楽に耽る年下の若い青年の淫らな姿を見ていたかった。
二十一歳の滑らかなあまり日に焼けていない肌の下には宿儺を咥え込むことで喜ぶ内臓がある。理性的でいっそ無愛想にも見える表情は今はなく、自ら出したコマンドで宿儺を動かし、欲求を満たされることに夢中になって気持ちよさそうにしている。元々柔らかかった関節は、この一年で更に可動域が拡がり、あらゆる姿勢で宿儺を受け入れるようになった。心なし、ただ排泄とアヌスからの刺激で射精するだけになった恵の性器が少し縮んでいるような錯覚をする時、宿儺の胸は満足感で満たされる。恵の性器は宿儺の口を知ったから、たとえ専用の道具であっても刺激が足りないだろう。恵の快楽だけを考えて舐め回し、吸い上げる宿儺の動きに勝るものはない。
事実、恵は宿儺にSuckを命じることが多い。恵が腰掛けている時は、Suckしていると、目尻や髪の生え際、恵の性器を含んだ頬を撫でられる。
最近は言いやすい「いい子」で褒められることが多いが、いい子いい子と声を掛け頭を撫でながら性的な快楽に夢中になる恵の姿に興奮してしまい、より一層強い刺激で恵の余裕を奪いたくなる。
今夜は鈴口も裏筋も前立腺も宿儺に刺激されて全く余裕がなさそうだ。命令されたいのに、命令できるような余裕があるのが気に食わないというせめぎあいの中、宿儺はいつも最後にはDomとしてSubを褒める恵にのめり込んでいる。奪っても奪っても、必ず残るそれがDomとしての本能なのか、意固地で頑固な恵の性質ゆえのものなのか。どちらにせよ、その最後に残るものも見たくて、宿儺は恵から余裕を奪う。
「ひぐ、あ゛っ! あ゛ああ〜〜〜!!!」
一際大きく恵の体が震えて、絶叫が響く。宿儺が口を離すと潮が勢いよく吹き出た。その潮を手に取り、恵のペニスに塗りたくると、恵は泣きじゃくりながら「いいこだ…りっく…」とコマンドを出した。
どこに触れても快楽を拾うであろう状態で宿儺の長くて肉厚で器用な舌を使って舐めれば、恵は腰を震わせる。恵はキスも好きだが、犬猫のグルーミングのように宿儺の舌で全身を舐められるのが好きだ。臍とアヌスは舌先を尖らせてグイグイ押し込まれるのが好きらしい。自分がDomで、恵がSubならば、その好きな箇所と理由を全部告白させるのに。どのように気持ちいいのかを言わせて恵の羞恥心を煽りながら、言葉にできて偉いと褒めてやる。そしてそれを繰り返すうちに自ら告白させるようにするのに。
「すくな……」
恵の声に応えて舐めるのをやめて、恵にキスする。コマンドはなくても分かる。恵の様々な体液を乗せてきた舌で恵の口内を弄る。呼吸を許さないくらいぴったりとくっついて舌を絡ませる。両手で恵の頬を包み、耳まで手を滑らせながら髪を梳くと気持ち良さげな声を漏らしたが、口が塞がっているからくぐもっている。親指だけで耳を塞ぎ、その他の指で恵の後頭部に触れれば、身悶え始める。自らが口を通じて犯されている音だけに集中させたい。
どれくらいキスをしていたか分からないが、宿儺が満足した頃には更に恵は力なく横たわって、とろんとした顔を晒していた。拡げられた脚を閉じることもせず、びくびくと体を震わせる姿の弱々しさが堪らない。
それなのに宿儺の頭を撫でながら、「よく、できたな……」と褒めるのだ。
「はぁ…あ、きもち、よかった……」
「これで終わりか?」
まるで事後のような言葉に突っかかってしまうと、恵が笑って「いん、さぁと」とコマンドを出した。
「はげしく、しろよ」
熱り立っていた宿儺の太いペニスを入れると、恵は頭を振りながら快楽で叫んだ。長いペニスは恵の奥深くまで潜り込む。前立腺に先端を当ててこすってやれば締まりが良くなった。性器からは何も出ていないから、空イキしたのだろう。余韻に浸らせることとなく、どんどん奥へと入り込んでいく。
「あーーッ! あ、う、うぐッ! あ――っ! いい、きもちいっ! アッ! 〜〜〜!」
恵の嬌声に一層満たされながら、興奮して更に硬くなったペニスを奥に入れる。
ごぽぉっという音が恵の腹の中から聞こえたとき、恵の締め付けがきつくなり、宿儺は射精してしまった。ゴムを付けていないために恵の腸を精液で満たした達成感は毎度の事ながら堪らない。
出した精液を利用しながら、萎えて細くなった性器をぬこぬこと出し入れする。まだ褒めてもらえていないから、抜くことはしない。
恵は自分の腹の中で宿儺が硬くなっていくのを感じているらしく、「おっき、あ、いい、あっ!」と口にするくらいだ。褒め言葉ではなかったはずなのに、宿儺の心はどんどん満たされていく。その分だけ腰の動きが早くなり、恵の全身を揺らす。使い物にならなくなった恵のペニスが無様にあちこち向かって揺れているのが可愛くて仕方がない。
恵は宿儺のDomだが、同時に宿儺に与えられる快楽に耽る好き者だ。宿儺と知り合うまでは自慰すら控えめだったというのに、今では尻に宿儺の性器を入れてよがっている。
何もかもがいい。この男の全てが宿儺の中の何かを刺激して夢中にさせる。同時に宿儺とつり合うDomは恵しかいないというSubの本能が出てくるのが鬱陶しい。
そういう理由でなく、隣りにいるのが心地よいからセックスをするのだと主張したくなる日が来るとは思わなかった。
体に刻み込まれた不本意な本能を理由にこんなに溺れているのだとは言いたくない。自らで制御できないものなど信用できない。伏黒恵を選んだのはダイナミクスという強制的なものではなく、宿儺自身の意志でなければならない。
なのに、Subとしての本能がセックス中は剥き出しになる。褒めろ、認めろ、与えろと鬱陶しく欲望が湧き出る。そして伏黒恵はその欲望に見事応えてみせ、宿儺に信頼と安心、快楽の全てを与えるのだ。
自分がこれほどダイナミクスへの蟠りを覚えていたこと、それによってのパートナーとの関係を繋ぐものについて事細かに拘るとは思わなかった。
「るっく! すくな!」
視線が恵に行く。恵は涙や唾液などでぐちゃぐちゃになりながら、快楽に苛まれながらも、宿儺をちゃんと見ている。余計なことを考えていたのがバレたのか。何にせよ、恵の絶頂は近い。それでもいいこ、と褒めてくるから腹立たしい。
「あ゛っ! 〜〜〜!」
射精を伴わずに腹の中だけで達した恵の締め付けにより、宿儺は更に奥へ腰を押し込み、S状結腸に精液をぶち撒けた。イッてる所に更なる刺激を与えられたからか、恵は快楽で体をビクビクと震わせている。陸にあげられた魚のようにのた打ち回るのを抑え込んで、最後まで注ぐのはかなり楽しいし、恵もその瞬間の快楽にいつも酔っている。
恵の体が落ち着いた頃、抜かないままでまたキスをする。今夜は恵の体がもう限界だろう。腹に出したものも掻き出さなければならない。
キスをしながら、ゆっくりとペニスを抜く。腸壁がまだまだと強請るように絡むのが愛おしい。精液で腹を壊さないのであれば、ここにたぷたぷと溢れるほどに注ぎ込んで一日過ごさせてやりたいくらいだ。全身から宿儺の匂いを漂わせて、他の誰も手出しができないようにしたい。この独占欲は、初めて本気で求めた相手だからだろうか。使い捨てで男も女も組み敷いてきたのに、恵とはもう一年も関係が続いて、何度も抱くたびにより強く求めてしまうようになった。
これはSubとしてではなく、人間の誰もが持つ、自分の特別を誰にも奪われたくないと仕舞い込みたい気持ちと同じなのだろう。自分がそんな普遍的な感情を持つとは知らなかった。
くたりとしている恵の額にキスをしてから抱き上げ、風呂場に連れ込む。全てを綺麗にしてやり、すやすやと寝てしまった恵に服を着せて横に寝転ぶ。
こんな気持ちで他人の安らかな寝顔を見る日がくるなんて、と何度も思いながら、布団をかぶる。
多分、どれほど胸の内で葛藤しようとも、宿儺は恵を抱き続ける。褒めて欲しいからなのか、自分の欲望をぶつけたいからなのか、その体に自分を刻み込みたいからなのか。わからないが、ダイナミクスはいつだって邪魔だと思うのだ。

