貴方の眠りをこの腕に抱いて(サンプル) - 8/8

「寝顔」その後 06

ふと目を覚まして、手が不快なことに気付いた。濡れているようだったが、一体何だと鼻に近づけて匂いを嗅ぐと、その正体が分かり、宿儺は笑いを抑えた。同居人が常識を持ち合わせていながら時々酔狂なことをするのはよく知っていたつもりだが、まさか宿儺の手で自慰をしたとは。恐らく、汚してしまった宿儺の手を拭うのにベットサイドのティッシュが切れていたから今頃階下に取りに行っていることだろう。
液体を舐めながら、宿儺は己の陰茎をしごく。あの澄ました顔の男がどのように宿儺の手で己を慰めたのかを想像するだけで興奮する。寝込みを襲うなんて、随分可愛らしいではないか。宿儺を安眠させられるあの男にしかできないことである。他の連中がしようものならすぐに気付いて、撲殺しかねない。
その時、寝室の扉が開いて下着姿の恵がティッシュを片手に戻ってきた。宿儺の行いを見てすぐに顔を赤くして気まずそうに目を逸らした。
「なに、して……」
「目覚めたら手が汚れていてなあ」
ぎくりと反応した恵を傍に呼び付ける。ちらちらと宿儺の勃起した陰経を見ていることはばればれだ。未だに勃起不全で、完全な硬さになるのが少ないからか、今の状態を見て期待しているようだった。確かに満足な性行為ができそうなくらいに仕上がっている。
「付き合ってくれるな?」
恵が下着を脱ぎ捨てベッドに上がり、宿儺の腰を跨ぐ。
「自慰を見せろ、無論俺のを尻に入れてだ。それで許してやる」
「……マジで言ってんのか?」
「お前の痴態を晒せ。快楽に狂うさまを見せつけろ」
恵が少々悔しげに、しかしながら興奮を隠しきれぬ様子でいきり立った陰茎にゴムをつけると、大きく足を開いて尻穴を広げた。この健気な男はいつ宿儺に抱かれてもいいように休日の前には自分で準備をする。今も解れた尻が宿儺の陰経を飲み込んでいるが、苦しげな様子はなく、寧ろ喜びながら喘いでいる。最後まで入れると、腰を振りながら恵自身の陰茎をしごいている。絶景だ。とろけた瞳が宿儺を見ている。物理的な刺激を内部と外部から与えられている上に宿儺の嬲るような視線が恵を興奮させているのだろう。
宿儺の言葉通り、朝のやわらかな光の中で痴態を晒し乱れる恵は宿儺の名を呼ぶ。宿儺は上半身を起こし、恵の脚を抱きかかえると自らのペースで腰を振り始めた。恵の嬌声が高くなる。いいところに当たっているのか、言葉がただの音になっていく。体勢のせいで宿儺と顔が近くなった恵がねだるように頬を擦り寄せた。唇を重ねてやると、自ら口を開いて舌をねじ込んでくる。発情期でも来ているのかと疑うくらいだ。
「他の男に抱かれてくれるなよ」
その言葉に恵がキッとこちらを睨む。
「しないって分かってるくせに言うな」
機嫌を損ねたかと思ったが、恵のはしたない体は宿儺をより締め付けて離さない。怒りと同時に愛情を示してくれるようだ。面白くなってきて、恵の白い尻を割けんばかりに掴み、動きを激しくする。
恵が達した時の嬌声に、宿儺も精液をゴムの中に吐き出した。朝から疲れたが、同時に随分楽しかった。
宿儺の腹にぶち撒けた精液を恵が先程持ってきたティッシュで拭う。へそまで丁寧に舐めるように拭われると、宿儺は恵を抱き寄せてその耳を舐めた。
「俺の寝顔に欲情したのか?」
恵は黙っていたが、小さく頷いた。耳が赤い。
「前からそうなのか?」
恵と性行為をしたのは二人暮らしを始めてからだ。実家では宿儺が恵の気持ちに応える気がなかった。そもそも眠気が強くて性欲どころではなかった。しかし、恵はどうだったのだろう。打算に塗れた同居生活を提案したのは恵だ。実家の時からこの男は宿儺に欲情していたのか。
「……悪ぃ」
恵が顔を手で覆い隠した。宿儺はその頭に口づけて、耳をしゃぶり、首筋を甘噛した。人に欲情されることが嬉しいのは初めての感覚だった。