寝顔おまけ(ルームシェアXX日目、交際0日目)
ある日の朝、いつものように見つめていた寝顔がむずむずと動いて、瞼を開けた。まだ半分夢の中にいるようなぼんやりとしたまなこだったが、不意に恵に近付いて、唇を重ねた。ほんの一秒くらいの出来事だったと思う。いつも至近距離で見ていると思ったが、そうではない事を知った。もっと距離を縮められるのに、何故気付かなかったのか。
何度か見つめ合いながら、唇を軽く触れ合わすことを繰り返す。時々恵の方から、上唇を食んだりした。
「何を不満に思う」
「短すぎだ」
恵の答えを聞くと、宿儺がもう一度ゆっくりと唇を触れ合わせて、舌で恵の唇の裏を舐めた。恵の体に巻き付いている宿儺の腕が、より力強く抱きしめる。拘束されて動かしにくくなった手を何とかして宿儺の顔に添える。宿儺の舌が、歯をなぞり、恵の舌と絡もうとしている。お互いの体温が気持ちいい。粘膜のふれあいに興奮するなんて、と驚きながら、角度を変えて何度も舌も唇も使って刺激し合う。いつの間にか、横にいた宿儺が恵に覆いかぶさっている。大型犬のようだと思っていたが、こうして見ると餓えた熊だ。悪くない。
「お前を逃すつもりはない」
恵の手首を捕まえて、首筋に舌を這わせて、宿儺が宣言する。何を言われても恵は愉快だった。
「だろうな、お前は俺がいないと生きていけない」
宿儺はそのセリフに笑った。
「見かけによらず激しいな、伏黒恵。楽しめそうだ」
その日の予定は全部ベッドの上で消えた。
数カ月後、贈られたペアリングは当然周囲の人間にバレてしまい、その上、宿儺が社会人になったと同時に籍を入れたので、途中から虎杖姓になったことを散々からかわれながら学生生活を終えることになろうとは思っていなかった。
