Non posso vivere senza di te.

 高級ホテルのスイートルームに行くと、既にジョルノは最高にセクシーな下着姿で卑猥な動画を見ていた。調度品には似合わない安っぽい喘ぎ声が響いてるのがおかしくて、ミスタはすぐさまジョルノの前に行き、跪いてその象牙のような美しい肌の太腿の内側にキスをした。
「君は女に会うと挨拶もなしにこんなところをキスするんですね、ミスタ」
「俺の火がもうついちまったんだよ」
 頬にキスをし、唇を親指の腹で撫でるとジョルノはその指を舐めた。
「シャワーしてきて」
「一緒に入ってくんねえのか?」
 耳に唇を押し付け、首の根本に手を這わす。まだテレビから流れる安っぽいセックスというBGMはミスタを後押ししている。
「やだ、だってそこでやりたくなるでしょ。僕はベッドじゃなきゃ嫌です」
 バスルームは硬いからやだ、と言われて仕方なく一人でシャワーを浴びる。
 バスローブを羽織って戻れば、ジョルノはテレビを消して、ベッドに横たわり、やっと来たと笑った。盛りのついた猿みたいに、ミスタはジョルノに飛び込んでその柔らかな胸とか、むっちりした太腿を撫でさすり、或いは揉んで、荒々しい息を隠しもせず、ジョルノに熱いキスをした。唇と唇を絡ませるだけじゃあなくて、舌と舌で二人の運命を確かめて、その耳を塞いでしまうことで今このひとときの間だけでもジョルノがミスタ以外を忘れてしまうように仕向ける。
 この女はサモトラケのニケのような優美と大胆さがあり、どのようにしてこの美しさを人の肉体としてこの世に現したのかがわからないほどだ。また、その体を美術品に例えることができても、その顔はどんなに美しい言葉を並べたところでそれらが現実に存在するこの美しさを表すのに不十分であり、完全なる敗北を認めなければならないという事も知っている。どんな国の人間より愛のための言葉を知っているイタリア人としてはあるまじき事だったが、この存在を前にして陳腐な言葉を並べることの虚しさと恥ずかしさを知らずにいることなどできない。知らない奴らは幸いだ。しかし、それは永遠に最高のものを知らないという哀れな運命であることも確かだ。
「ジョルノ」
 太陽という名に相応しき黄金の髪とその微笑みは更にジョルノが何ものにも置き換えられないほどの価値がある存在なのだと知らしめていた。それなのに、彼女が口にする言葉と言ったら、娼婦よりはいくらかマシというもので、しかしその俗っぽさが堪らなくいい。その口から出てくる言葉のお陰で、神のつくり給うた最高の美が人になりうるのだから。
 長いキスのあとはお互いの体を愛撫する。初めの頃のジョルノの愛撫はぎこちなく、ミスタは愛撫されているという事実だけで燃え上がっていたものだが、今ではその愛撫も手慣れて、ミスタの体を燃やすようだった。情熱的でいて、だからといって若さに任せるような勢いだけではなくて、繊細にその手がミスタを抱きしめていた。ミスタの肉の熱を確かめて、ジョルノは初めて興奮するらしい。そういうところも堪らないから、ミスタはこの女のために全てを差し出すのだ。
 ジョルノのなだらかな丘のような胸を舌で遊ぶ。その間も腰を互いに擦り寄せあい、中途半端な刺激を楽しむ。性急なセックスも楽しいが、しつこさも時々は必要で、要するにリズムが最も重要なのだ。運命が結びつける二人には、その二人しか知りえぬ二人だけのリズムがある、ミスタは既にそれを知っていて、ジョルノはミスタに翻弄されるのではなく、ミスタとしか踊らないステップを楽しんでいるのだ。だから次にミスタが何をしようとそれは二人が最高のセックスをするための演出であることを知っている。知っていることは偉大だ、ミスタを常に受け入れてくれるということなのだから。
 胸から次第に降りてゆき、その腹を通り過ぎれば、楽園が見える。神秘がそこにはある。ミスタはジョルノの身を起こさせ、ベッドから降りて壁に持たれるように立たせると、自身は屈んでショーツの上から隠された扉を舐めた。ジョルノはミスタの肩に片方だけ足を引っ掛けて、よりミスタに迫った。この女の表の顔を知っていると、こんな些細なことでも可愛く思えて仕方がない。部下には慈愛の女神の顔と、冷酷無比な悪魔のような顔を見せているが、今のジョルノはミスタというちっぽけな男に体を差し出し、性欲を任せ、ミスタが触れるたびに奥底から熱を発し、卑猥な声を漏らしている……最高だ。神の愛した美そのものを俗な女にしているのも、その美が雌の顔をして男によがる姿を知っているのも、この世でただ一人、ミスタだけだという事実も最高にやばい。
 下着をずりおろして脱がせると、ミスタはいよいよ遠慮することなく、手と舌でジョルノの性欲を満たすことにした。先程からずっと濡れているそこを、舐めて、キスするように舌を伸ばし、或いは吸って、手でその神秘の道を掻き分けて、ジョルノの絶頂を迎えさせる。ジョルノは酷く甲高い声でミスタの名前を呼びながら、何度もその体を震えさせた。甘美なひとときだ。ジョルノの足の力がぬける度に、ミスタはもっとジョルノに刺激を与えさせる。おかしくなりそうという叫びを聞くために何度も何度も刺激する。我慢できないと言われたら、ミスタはその言葉に従って二つの体を一つにする。
 ジョルノはミスタがその身の奥に侵入したことが分かるとミスタに抱きついていなければまともに立てなくなった。両足をミスタの体に巻きつけて、ミスタが揺するリズムに合わせて言葉にならない感情を顕にする。それがたまらなく好きなのだ。
 ベッドに再び戻って、ミスタはジョルノに馬乗りになり、恥ずかしがるほど脚を広げさせて、明るい室内でその濡れに濡れた場所を見る。柔らかな金の穂の向こうに赤く染まった肉がある。その肉こそが至高の楽園へとミスタを誘い、惑わせ、夢中にさせる。その肉はミスタのみを受け付ける。ミスタしか知らないし、これから先も他のものを入れたりはしない。それがわかっていることの幸せは言葉に出来やしない。
 ゆっくりと、焦らすように、ミスタはジョルノの中に入っていった。暖かくて柔らかく、ぬるぬると濡れていることがミスタを幸福感に包む。ジョルノの表情を見れば、更に興奮してしまう。
 焦らしたあとは激しさを欲してしまう。その細い腰を掴みながら、ジョルノの奥底まで、この前のセックスよりももっとその奥にあるものに近づこうと激しく揺さぶればジョルノは泣いた。泣き顔も最高に可愛くて、興奮する。
 一度ジョルノがイッたのが分かると、ミスタはジョルノを四つん這いにして、犬のようなセックスをした。これをすると、なんだかむりやり犯しているのではないかと時々錯覚してそれがとても良い。本当のところは、ミスタがジョルノを犯してるのではなく、ジョルノがミスタの体を求めたのだ。それがそもそもの始まりであって、今日だってミスタはジョルノに呼び出されてここに来た。
 初めて抱いたのはブチャラティチームが実質的になくなってしまった4月の初めだった。トリッシュを送り届けて、何もかも気が抜けたほんの一瞬の時だった。ポルナレフが宿る亀をバスルームにおいていき、ジョルノはミスタと同じベッドに下着姿で潜り込んできたのだ。ミスタはそれでジョルノにキスをして、二人は恋や愛の運命のパートナーではなく、生きる事そのものの運命を共にすることを互いに確認したのだ。何があっても裏切らないし、疑わない。ずっと傍にいて、どんな事があっても守る。まるで初恋に浮かれる恋人の戯言のようだったが、二人にとってどれほどそれが重い意味をなしているか、二人にしか分からない。
 好きや嫌いだけの感情で生きていたら、世界はとても単純で単調で面白みのないものになっていただろう。ミスタはこの美しい女を愛しているし、この女のやることなすことこそがミスタを幸福に導いてくれるものだと信じているが、だからといって、二人の関係を恋人にたとえたり、夫婦のようなものだとは思っていなかった。そういう社会的一般の関係とは何かが決定的に違うのだ。それは分からない、全てはあの奇妙な一週間の所為だということしか分からない。あの一週間がなければミスタはこの女をこんな風に想いながらその身を抱きはしなかったろう。
 ジョルノが一層高い声で啼いたあと、ミスタはジョルノの体の中で果てた。

 精液を掻き出して、シーツを取り替えてシャワーを浴びると、二人は軽いキスをかわして眠ることにした。
「君が不妊症なら気にすることなく出しまくっても構わないんですけどねえ」
「失礼なこと言うんじゃあないぜ! 俺は子供ほしいんだからよオ」
「なら早く結婚相手を見つけたら?」
「結婚っつうことは家を預けるってことだろ、中々そう簡単にはいかねえよ。それに俺たちの関係に口出しするような女は困る」
「それは確かに。僕からミスタを取り上げようなんて図太い女にはお目にかかってみたいですけどね」
「だめだな、俺がそんな女には惚れねえからよ」
 ミスタはジョルノの波打つ金の髪を手で梳きながら、ジョルノの首筋にキスをした。
「僕は誰の子供も産む気はない。何があっても、産まない」
「わぁってるよ、ジョルノ。お前はそれでいい。それでも俺はお前とセックスをするだけだ」
 ジョルノが少し泣いて、ごめんと一言言い出す前に、ミスタは優しくその琥珀の瞳を手で覆い隠してキスをした。