リムルは現在スライム状態でシュナに抱えられて移動している。別にいつもの事じゃないかと思われるかもしれないが、実は違う。何かをしようとすれば必ず「お体を大事になさって下さい!」と周囲が大騒ぎして、リムルが歩くのすら阻止するのである。迷宮への立入りは勿論禁止され、そこらを散歩するのも誰かの付き添いがなければ駄目、スライム状態で移動するならば絶対に誰かに運んでもらわなければ駄目、と勝手に周りが決めたのである。
理由は分かっている。リムルの体内にベニマルとリムルの子供がいるからだ。
スライムが意思を持って喋るだけでも大層珍しいのに、子を成すというかなり珍妙な事態が起きたので、皆が何をどうすればいいのか分からず、とりあえず安静にしているのが一番と、リムルの行動を制限しようとしているのだ。
さてはて、スライムが子を成すことは基本的にあり得ない。しかし、リムルはベニマルの為に子を孕んだ。その子は、現在リムルの腹にいると皆に思われているので、飛んだり跳ねたりして移動するスライム状態はお腹の子供に悪いと慌てて止められるのである。違うって、その為の器官がないから究極能力によって体内で生成し、亜空間で隔離して存在値を安定させているんであって、多少のことがなければ子供に影響は与えやしないと説明すること2時間、多少の理解を得たが、結局、秘書達が代わる代わるリムルを運ぶことになってしまったのである。
そもそも、妊娠したとか、孕んだとか言われるとリムルはムズムズして「違う!」と叫びたくなるのだ。確かにリムルの体内でベニマルの遺伝子とリムルの万能細胞は融合し、更には精霊を交えて、生命が発生したわけだが、感覚としてはヒポクテ草からフルポーションを作成したのに近いのである。ヴェルドラやカリスを胃袋に入れてた時とも似ている。スキルによって生成されたこの命の親であるという自覚はあるが、妊婦扱いされるのは気持ち悪いのである。だから、妊婦扱いするなと周りには再三伝えているが、今のところあまり効果はない。
ベニマルも出産経験のあるゴブリナや博識なシュナ、更にはモミジやハクロウを通じてカエデから様々なことを吹き込まれているらしく、やたらと慎重な扱いをするので、鬱陶しい。いや、だから、確かに体の中にはいますよ、いますけどね、今まで通りで大丈夫なんですよ。智慧之王も影響はないと断言してるし、気を使われる方が疲れるのだ。リムルを妊婦扱いしないのは、ベニマルとの関係を未だ認めぬミリムとリムル以外の全てに興味を持たないディアブロくらいで、あのヴェルドラすらやたらと慎重になっているのが面白いといえば面白いが、これがあと100日以上続くとなると、その所為で気が滅入ってしまいそうだった。
その上、妊婦なのだからと誰かからの入れ知恵で、ベニマルはリムルを抱かなくなった。要するに腹に子が宿ってるときにそんなことをするものではない、腹の子が流れる、と言われたベニマルは律儀にそれを守っているのである。リムルは再三妊婦じゃないからやろうと誘っているのにベニマルが固辞するので、リムルは段々辛くなってきた。今までも頻度が多い訳ではなかったが、誘えば乗ってくれたのに、断られるなんて初めてで、少し、いや、かなり、悲しくなった。子供の為というまともな理由と分かっていても、パートナーから断られるとショックが大きい。況して、ベニマルからの強烈な愛情をそそがれることのない日々は何か物足りないのだが、ベニマルの真面目さを曲げることは出来そうになかった。
ただ、キスだけはしてくれるので、いつも以上に口だけで求めあって、快楽を得るのだが、もっと刺激が欲しくてたまらなくて、今までにないくらいねっとりとしたキスをするようになった。ベニマルはそれが嬉しいのか、リムルが求め続ける限り応えてくれるので、欲求はある程度満たされているが、抱かれたあと程の幸福感には至らない。まだ100日以上残っているのに、今こんな状態では持たないのでは? という危機感がリムルにはあった。
そんな折、ベニマルと抱き合いながら寝転んで、緩慢なじゃれ合いを楽しんでいたのだが、ベニマルの一言で全てが始まった。
「そういえば、リムル様って乳は出るのか?」
「何言ってんの、お前。出る訳ねえじゃん」
リムル=テンペストがスライムであることを忘れているのかと疑ったが、子を孕むくらいだから母乳くらい出そうなものだと思ったらしい。そんな機能は聖受胎にはない。
「だが、どうやって育てる?」
「ええ〜? 俺に聞かれてもなあ……」
人間時代はそんなものと無縁な生活だったし、今でもそんな事とは無縁なのだ。吸っているのは女の乳ではなく、男の精だし、とベニマルの耳元で囁いたら、そんなこと言われると抱きたくなるからやめてくれと顔を真っ赤にされた。そのまま本能を暴走させてくれればいいものを、下のものはガチガチなのに理性が強すぎてやっぱり抱いてはくれなかった。いつもは遠慮や我慢なんてしないくせに、と詰っても効果はなかった。子孫を残さない限り進化しないという頑固な真面目さは今でも健在なのだった。
○
母乳については妊婦から出るもの、以上の知識がリムルにはなかったので、智慧之王にシズの体から得た情報を元に解析してもらった所、生成にはかなり複雑な演算が必要になることが分かった。乳児の成長具合によって成分が変わるなんて面倒なことこの上ない。女性の肉体はこんな面倒なことを自然と熟すというのだから、平伏する。リムルは勿論、そんなことを自力で出来ないので、智慧之王に頼るのである。リムルの体内にある水と、リムルが摂取した食事から栄養素を抽出し、それっぽいものを生成することは可能だった。また、時期によって成分を変更する事も智慧之王ならお茶の子さいさいだった。流石である。
これをどうやって与えるかが問題であった。いや、人間態の胸部に左右対称に小さな穴を開け、そこから分泌すれば授乳自体は可能だ。乳児の吸いやすいように突起をつけることも擬態の一部として可能である。
ただ、それをすることにリムルが抵抗感を抱かないかと言われると困るのだ。性別がないし、子宮ではないとはいえ今や体内に子を宿しているものの、リムルの自認する性別は男だ。ナイスでクールなガイだ。ベニマルに抱き潰されることに幸せと喜びを感じていようとも、リムルの心は男なのである。しかし、授乳をしてしまうと流石に心がブレるのでは、という危機にも似た疑問が生じている。聖受胎なんていう名前のスキルのせいで我が子を抱いて微笑む女を描いた宗教画が頭の中で舞っている。聖母マリアではないぞ、このやろ、と思いつつも、子供を育てるという大義の前でそんなものを優先させるのは、親として如何なものかとも思う。
日本史にも有名な春日局のように乳母でもつければ問題なくない? とベニマルに提案したが、魔物には自分の子以外に乳をやる文化があまり根付いていないようであった。理解はされても、協力してもらえるかどうかは分からないし、そもそもリムルもベニマルも高位の魔物であり、その子供もまた魔素量がAランクオーバーになるだろうとして、そんな子供に乳を与えて耐えられる魔物は少ないのではないかとも言われた。そこにも影響あるのか、と驚いたが、そもそも高位の魔物が下位の魔物に子供を預けることがないので、どうなるか分からないが、恐らくそうなるだろうとのことだった。子作りも命懸けなら、子育ても命懸けとは。魔物連邦国の住人達はかなり強いが、ベニマルとリムルの子供に耐えられるかどうかは分からない。
ならば、同等の魔物であるシオンやシュナに白羽の矢が立つところだが、ベニマルがどちらも否定した。ベニマルはシュナに子供を預けることならば賛成だが、シュナの婚姻なんて絶対認めないつもりらしい。自分はちゃっかり結魂して子供までこさえた癖に、愛する妹が他の男の手に渡るなんて考えたくもないとのたまう。それはこの前リムルが抱いた嫌悪感と同じ類いなので、それ以上は言及しなかった。また、シオンが子供を望むような相手と巡り会える気がしないので、シオンも却下したとのことである。シオンにも奇妙な人気とカリスマがあるので親衛隊がすごいことになっているのだが、それでもシオンはその中から夫を選ばないだろうと言われると納得してしまう。
つまり、リムルが授乳するしかない。逃れられない状況に頭が痛かったが、誰も見ていない所でこっそりやれば何とか乗り越えられるのかもしれない、と己を誤魔化すことにする。
ベニマルに母乳もどきは生成可能だから、何とかなるんじゃない、と伝えると明らかにほっとしていた。シュナを乳母にするなら嫁に行かせるしかないのかと苦悶していたのを、そんな飛躍的発想は捨てろと再三言い聞かせていたがそれでも嫌だと苦しんでいたので、この報告は余程嬉しかったらしい。伴侶より妹かよと肘で小突いてやろうかと思ったが、シュナに見合う男なんていないという気持ちはよく理解できたので見逃してやることにした。あんなに可愛くて有能で最高な美少女に釣合う野郎などこの世にいないのだ。
とにもかくにも、魔物ではなく人間のものを参考にしているとはいえ、子育ての準備はしたのである。よしよし、と思いながら、ベニマルに問う。
「ベニマル君」
「なんですか? 何を企んでるんです?」
「企んでねえよ。ただ、どんな味か気にならないかなってだけ。どう? 気になる?」
見せつけるように胸部に手を当てて、わざとらしい顔をすれば、ベニマルがうっと呻いて、リムルを睨む。リムルには分かっているのだ、ベニマルは自分の性的欲望をオープンにするのが苦手なだけで、実際にはむっつりスケベなのだと。やり始めるとその羞恥心は吹っ飛ぶのだが、それまでは口にするのを嫌がる。ただ、その目を見れば、すること自体は嫌がるどころか求めていると分かるのだ。それを今は頑強な理性で押し留めている。リムルにしてみれば、そんなものは不要なのだ。
理性と欲望がせめぎ合って切ない顔をしているので、あと一押しとばかりにベニマルに身を寄せ、上目遣いをする。ベニマルは天を仰いで、ウンウン唸って諦めた。
「……気に、なり、ます……」
「素直でよろしい」
ベニマルをベッドに誘導し、リムルは上半身だけ服を脱ぐ。ベッドに座るベニマルに跨り、その口の近くに胸部を寄せた。胸の突起は普段作成不要のため存在しないので、ベニマルはちょっと驚いていた。
「ほら、吸ってみろよ」
「いや、でもこんな態勢だったら、やりたくなるじゃねえか!」
「我慢しなくていいんだぜ? 何度も言ってるだろ、やっても子供には影響ないって」
それに、そろそろベニマルを味わいたいと耳元で囁き、更には耳を舐める。耳の形をなぞるようにねっとりと舐めれば、ベニマルが感じているのが分かった。あともう少し。早く陥落してほしい。ただ、我慢しているベニマルの顔がやたらとエロくて、これはこれでありかもしれないなどと思い始めてきた。それでは意味がないので、放置プレイや我慢プレイは今度試すことにしよう。
「ベニマルは俺とやりたくない?」
「そんなことあるわけがない! クソッ、ほんとに大丈夫なんだな?!」
到頭欲望が理性を超えたらしい、ベニマルがリムルの腰を掴んで引き寄せ、リムルの胸部にある突起を口に含んだ。舌で舐め、唇で吸うたびに母乳もどきを分泌させる。ちゅうちゅうとベニマルがリムルに吸い付く姿が赤ん坊のようで滑稽で尚かつ面白くて、リムルはベニマルの頭を撫でてやる。
各種耐性スキルや無効スキルの効果を切り、胸部と触覚をリンクさせれば、リムルは快楽に沈んでいけた。偶に歯で挟まれたり、引っ張られたりすると、その刺激でリムルの体がビクビクと震えた。それすらも許さぬようにしっかりとベニマルに体を拘束されれば、逃げることなどできない。
これだ、これを求めていた、とリムルは歓喜する。腰をグラインドさせれば、当たっていたベニマルの股間のものが勃起していくのも感じる。早くこれを入れてほしい、と腰をこすりつければ、ベニマルがやけくそになったように、リムルの服を脱がせて、股間の穴に指を突っ込んできた。胸を吸われながら体の奥に侵入されると、リムルは嬌声を上げることしかできなくなった。ベニマルの動きに翻弄されて、理性が溶けていく。気持ちがいい。幸せで堪らない。
しかも、液体を胸から分泌させるだけでも感じてしまうことに気付いた。これは大きな発見である。ベニマルに吸われていない方の突起からも快感を覚えている事に驚きつつ、リムルは自分の可変する体に感謝した。普通の肉体構成ではこんなちぐはぐな感じ方はしないはずだ。スライムで融通がきくからこそ、また、ベニマルとしているからこそ、こんなに快楽を享受できるのだ。多幸感で頭が痺れながら、ベニマルの成すがまま、リムルは絶頂に至った。
解放感に惚けているリムルをベニマルは横たえると、また乳を吸い始めた。尽きることのない母乳をぺろぺろと舐めているのがおかしくて、愛おしい。
「どう? 美味しい?」
「ほんのり甘くて、美味いです」
「気に入ったようで何よりだ」
ぢゅうっと強く吸われると、そこから痺れるような快感が体を駆け抜ける。久しぶりに感じる悦楽に、リムルはもっと吸ってと強請ると、ベニマルは嬉しそうに胸を吸う。やり始めると素直なのが可愛いんだよなあ、とにやにやしてしまう。
だが、胸だけでは全然足りない。ベニマルのものを咥えてこそ、リムルは最高に幸せなのだ。
覆い被さられているので、足でベニマルの股間を刺激してやると、ベニマルはリムルを横向きにして、挿入しつつ、胸を吸い続ける。リズムよく揺さぶられながら、刺激を感受していると、もうわけが分からなくなる。そこで一度ベニマルが射精した。体の奥に注ぎ込まれる精をスキルで全て回収し、キスをする。
確かに、ベニマルの口はリムルから分泌された母乳もどきで少し甘かった。こんな味がするのか、とベニマルの口を味わうと、それで興奮したベニマルがすぐさま挿入して、激しく動き始めた。その間もベニマルの指がリムルの胸を抓んで、押し潰して、引っ張って、めちゃくちゃにして、搾り取ろうとする。3ヶ所で弄ばれるのは初めてで、リムルは対処できなくなって、もう啜り泣きながらベニマルにしがみつく。ベニマルはそんなリムルに応えるように、執拗に攻めて、また達した。どくどくと注ぎ込まれる感覚にさえ感じて、リムルはびくびくと体を震わせる。幸せすぎて、このままでいたい。
ベニマルが体から抜けていくと、今度は四つん這いにさせられる。後ろから膨らみのない胸を掴んでくるので、黒霧で多少の脂肪をつけて、揉みやすくしてやると、明らかに反応が変わった。興奮具合が一段階上がって激しくなる。どんな顔をしているのか見たいのに、バックだと見えなくて悔しい。ただ、揺さぶられる度にリムルの即席の乳房も揺れて、その感覚が新鮮で感じてしまうから、また頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
三回目の射精後、リムルはベニマルの顔をまじまじと見た。快楽と幸福でどろどろに蕩けたベニマルの顔は凄くエロかった。それでいて、リムルを食い尽くそうという気迫があって、ぞくぞくする。そんなベニマルの頬を両手で包み、引き寄せ、唇を重ねる。ちゅっと音を立てて、軽く味わいながら、舌を絡ませていく。リムルによって理性の箍を外していくベニマルが愛おしくて堪らない。こんなにベニマルを可愛く感じるとは、人生何があるか分からないものである。
その後も、リムルの過去のコレクションで見たプレイをなぞるように、授乳しつつベニマルのものを扱いたり、対面座位で吸われながら挿入されて、散々二人は互いを味わい尽くすと、今まで我慢していた時に感じていたもやもやした感情がすっきり消えていくのが分かった。
ベニマルもやっぱりリムルを抱きたかったのだなあと感じる事ができてリムルは大満足だったし、ベニマルは我慢しなくていいと漸く納得したようで、二人は何度も享楽に耽り、夜を過ごしたのだった。
因みにベニマルは膝枕されながら授乳されることにより新しい扉を開いてしまったらしかった。リムルとしては大変面白いので、よちよちと頭を撫でて子供扱いしてやった。
そんなこんなで、夜の営みも復活して上機嫌なリムルはシュナや職人らと相談して、ベビーグッズの開発に勤しんだり、生まれてくる子供のねえやとして立候補してきたアルビスとモミジをどうするか、カリオンやハクロウと相談しながら、日々を過ごしたのであった。
