恥ずかしくない穴

 ぴちゃぴちゃとわざとらしい水音が時々自分の腹の近くから聞こえる。ずずっと吸われた時にぴくっと腰が引けたが、恵の臍を舐める宿儺は逃してくれなかった。
 くぱぁと指で臍を拡げて見られると羞恥心で暴れたくなるのに、恵はろくに抵抗していない。ちろちろと舌先で臍をほじられ、あるいは舌全体で臍のあたりをべろぉと舐められるのを甘んじて受け入れている。
 同時に臍からじわじわと暖かな呪力が波紋のように広がる。時折声が漏れるのはその為だ。決して臍への刺激に反応しているわけではない。
「ん……ぁっ……はぁ………」
 恵の部屋には恵の微かな声と、宿儺が臍を舐める音しか聞こえない。服の裾を持ち上げていろと言われて、自ら腹を晒しているが、ベッドに腰掛ける宿儺を跨るように膝立ちをしている今、宿儺の肩に手を置きたくて仕方がない。腰をしっかり抱き締められているから、うっかり力が抜けても後ろに転倒することはないだろうが、しがみつきたくて堪らないのだ。
 時折宿儺の手が内腿や尻を触る度に恵の腰はピクピクっと僅かに震える。期待している後ろがひくひくしている自覚はあった。一切触られていない前は既に下着を汚している。
 なのに、宿儺は臍にしかキスをしていない。呪力を回復させてやるとヘトヘトで帰ってきた恵を労っているはずなのだ。最初は確かにじんわりと自分の体に宿儺の呪力が広がる気持ちよさにうとうとしていたくらいだったが、今はそんな余裕がない。
「あぅ…! ぁ……あっ……!」
 漏れ出る声に宿儺が鼻で笑った。悔しい。宿儺がいじればどんなところでも反応してしまう。そう教えられたわけではなく、宿儺のテクニックが巧みだからだ。なんでもなかった個所が、一時間も経たない内に悶え苦しむほどのものを感じるようになった。宿儺との関係はいつもそうだ。
 宿儺の舌がぐぐっと臍を押した時、恵の腰が一層揺れた。痙攣したと言っていいほどだ。
 圧倒的開放感、すぐにやってくる濡れた感触の気持ち悪さ。何をしているんだという虚無感、だって抗えるわけがないという言い訳、臍を舐められただけなのにという羞恥心。何より宿儺が施すものが普通ではないと認識していたはずなのに忘れていたくらい宿儺を信頼している自分。
 荒くなった息を整えていると、宿儺が「随分楽しそうだったな」とニヤニヤ笑っていた。呪力を注がれたことによる回復は確かになされた。過程でどれほど体力を消耗していたとしてもだ。
 恵は宿儺の鼻を摘んで「この野郎……」と凄んでみせたが、ふふんと笑われただけだ。
「これで動けるようになったろう。俺は部屋に帰る」
 は? と恵は驚いたが、宿儺は恵を退かして部屋を出ようとした。
 慌てて宿儺の背中を追いかけ、服を引っ張った。
「もう帰るのか」
「用事は済んだからな」
 寝ておけ、と言われても恵は納得できない。背後から抱きついて、耳元で囁くと、宿儺はすぐに方向転換して恵を抱き上げ、風呂場に向かった。
「折角体力を回復させてやったのに激しく消耗したいとはなあ」
「お前のせいだからな」
 こつんと頭を小突いても宿儺はなんのそのだった。

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