姿の見えない君

吸血鬼の恋人をもつことについての苦労やカルチャーショックは沢山経験してきた。その度に大変な思いをさせられたが、それでも恵は宿儺という吸血鬼の王との交際をやめる気にならなかった。気難しくて横暴で残酷で大変困った人間性(?)ではあるが、可愛く思えて仕方がない恵はもう宿儺から離れられない。
今夜は初めて浴室で宿儺が不埒な行動を始めたので、恵は床のタイルで足を滑らせないかを気にしながらキスをしていた。
宿儺の城の浴室は現代的な装いだ。宿儺の快適さを追求した部下の裏梅の努力の結果らしい。大きな鏡や浴槽、シャワーなど、それはもう全てが宿儺に合わせて作られており、却って恵は自分が小人になったような気持ちにさせられるのであまり好きではない。バスチェアーに腰掛ける宿儺に背を預けながら抱きかかえられて、体のあちこちを弄られる。振り向いている口の中を肉厚の蛇のような舌が這い、大きな右手が恵のペニスを絶妙な力加減でしごき、左手は恵のアヌスをくにくにと弄っている。恵の足は、宿儺の丸太のような足に引っ掛けられて大きく開いている。とても不安定な体勢だから、必死になって恵は宿儺にしがみつく。アヌスとペニスを触られてなかったら落ちている。
そのうち、宿儺が前戯に飽きたのか、太くて厳ついペニスを恵に少しずつ焦らすように入れ始めた。背を仰け反らせて耐えていると、宿儺がくつくつと笑っていた。
「いい、実にいいな。お前のナカが見えるぞ」
……?」
顎で前を指す宿儺に促され、目の前を見て、恵は大きく体を震わせて逃げようとした。例の宿儺の巨躯を映し出せそうな鏡には、宙に浮き、体をくねらせ、恥部を晒す恵しか写っていなかった。
ひくひくと震える赤いペニスも、収縮して宿儺を飲み込もうとしているアヌスも丸見えだ。それどころか、宿儺が入り込んでいる分だけ拡がったアヌスの中まで見えている。赤くテラテラとしている襞が見えることの羞恥心をなんと言えばいいのか。
「なッ――! やめ、〜〜〜っ! あ、ぅッ!」
「止めるものか。お前の痴態だけが見えるのは実にいい」
宿儺は上機嫌で恵の体を揺さぶる。宿儺の太い陰茎が入れば入るほど、恵の穴が中身を見せる。恥ずかしいし、頭が混乱する。間違いなく恵の目は宿儺の姿を捉えているのに、鏡の中では恵一人が宙に浮いて腰をくねらせ、体を震わせていた。
「吸血鬼は鏡に写らない。教えていなかったか?」
「あっ……!」
肖像画を持つような性格ではないのに、城のあちこちに宿儺の肖像画が飾られていたのを不思議に思って聞いた時に教えてもらっていた。だが、その時は深く考えていなかったし、この浴室は使わせてもらったことはあれど、宿儺と一緒に入ったことがなかったから気にしていなかった。
宿儺の指が埋没している恵の乳首をじわじわと攻めて、引っ張ったりつまんだりくにくにと弄んでいるのに、鏡の中ではひとりでに乳首が快楽を求めて疼いているような不思議な光景が見えた。
恵の痛いほど勃起しているペニスも同様に、宿儺の大きな手で扱かれているはずなのに、滑稽なほどブラブラと揺れているようにしか見えない。
無様な姿に羞恥心と葛藤が湧き上がるのに、宿儺は決して手を緩めず、寧ろアヌスをぐぐっと拡げるように長大なペニスを更に膨らませる。どれだけ興奮してるんだ。膨らむたびに恵のアヌスの縁がくぱくぱと反応して必死になっているのが丸見えだ。その奥が蠕動するのさえ見える。
「姿が見えぬこの身が確かに実在していると感じる……
宿儺の舌が恵の首筋を舐めている。この舐め方には覚えがあって、更に鏡の中の恵は追い詰められた顔をしていた。なのにアヌスは受け入れようと更に疼いている。
鋭い牙が皮膚を破るのは一瞬だ。熱く感じる首から血の匂いが流れる。溢れ出た血を啜りながら、宿儺は恵の腹の奥へとペニスを進めている。完全に勃起しているサイズのはずなのに、何故か更に膨らんでいるような気がするのは何故なのか。みちみちと恵の腹を開こうとする凶器に、しかし恵のアヌスは食らいついている。
「あっ! ま、や! うぐっ――も、お――おっきく、すんな! あッ?! また――ッッッ!」
「堪らん……
血を啜って更に興奮したらしい宿儺はその後も鏡の前から動かず、恵が気絶するまで抱いた。射精したら精液は可視化されるようで、入れたままではその液体が自分の穴からなかなか出てこないのに、宿儺がペニスを出し入れすると掻き出されて垂れてくる様子を鏡越しに見て、奇妙な気持ちになったのだけは覚えている。
以降、宿儺は時々浴室か寝室で鏡プレイを求めるようになったので、恵は五回に一回は断っている。