そういうお友達

 中学時代から、むしゃくしゃすると不良や半グレなどを殴って回っていた。理不尽な悪人を嫌う感情の爆発はしかし、不完全燃焼になることもあり、その度に恵は同級生の宿儺の家に行き、二人で部屋にこもって、人には言えないようなことをしていた。
 同じ高校に進んでからも、その行為は続いている。若さゆえに有り余るパワーや欲求を満たし、或いは発散していないとやっていられないからだ。
 土曜日の昼間から、ベッドに腰掛け、宿儺と恵は互いの性器を握って擦り合っている。もう二年以上しているのでどこが弱いのかなんて把握しきっている。焦らしたい時はそれを避け、逆に悶えさせたければそこを責める。先に出した方が相手にフェラをしてやるのがお決まりだったから、その時の心情によっては我慢したりしなかったりする。
 舌を絡ませながら、恵は宿儺を責め立てる。今日はフェラしてほしい気分だったから、早く出させたかった。宿儺の気持ちよくなるところを口も性器も重点的に刺激してやると、宿儺が先に出した。
 荒くなった息を整えながら、宿儺がベッドから降りて恵の性器を口に含む。あたたかくぬるぬるとした口内で、宿儺の巧みな舌の動きが恵を翻弄する。裏筋も雁首も鈴口も全部だ。あまりに気持ちよくて、声を我慢することができないし、もっとしてほしくて宿儺の頭を掴んで腰を押し付ける。ぐぐっと入れ込めば、宿儺の喉まで届いて、それがまた気持ちいい。
「ァアッ、いい、それいい……ぅんッ」
 宿儺が恵の顔を見て、器用にも性器を咥えながらにんまり笑った。恵の性器を吸い込むように咥えられて、悶絶しながら宿儺の口の中に吐精する。尿道に残る精液すらもチュウッと吸い取られて、恵はベッドの上に倒れ込んだ。
 はぁはぁとお互いの荒い呼吸が宿儺の部屋に響く。
 宿儺が乗り出して、恵の唇に襲いかかる。先程出した恵の精液をお互いの口でやりとりする。ねちゃねちゃと唾液と精液が卑猥な音を立てて、気分を高揚させる。
 宿儺の性器をまた握れば、とっくに臨戦態勢で、固く太くなっている。それを自分の性器と共に握り込む。賢者タイムなんて来ない。興奮しっぱなしだ。
 性器を握る恵の手に宿儺が擦り付けるように腰を動かす。まるでセックスしているみたいだな、と笑いつつ、ぎゅっと宿儺の性器を刺激してやる。始めはゆっくりだったのに、徐々にスピードが早くなり、押し付ける力が強くなる。タイミングを見計らって宿儺の舌を甘噛しながら、手をきつく握りしめると、宿儺と恵は同時に射精した。ベタベタになった手を、宿儺が舐める。
 服装の乱れを少し整えて、トイレで手を洗った後、宿儺が恵を後ろから抱きしめながら、二人でベッドの上に座る。
「次は素股をさせろ」
「ガチなやつだろ、それ」
「何か不都合でも?」
「いや、別に……」
 不都合はない。ただ、宿儺との関係がどんどん深みにハマって抜け出せなくなっているという自覚があるだけだ。お互い、他人が嫌いなくせに、自分と同じレベルで話せる相手を求めていたし、体を使って発散したい感情や欲求についても、何も話し合わなくても分かり合っている。だが、宿儺でなければだめという気持ちはない。セフレというにはお互いの腹の底まで見せあって打ち明けてしまっているのに、恋人と言うには甘さもなければ優しさもない。
 いつかこの関係が終わる日が来るのだろうか。来るような気もするし、結局だらだらと続けていそうな気もする。大学まで行けば、自然消滅するのだろうか。してほしいとも、してほしくないとも思わない。ただ、腹に回る手に心地よさを今感じられたらそれでいいだけだ。
「好きにしろよ」
 恵が投げやりに言えば、宿儺はゲラゲラ笑って項にキスをした。

 素股は随分と勝手が違った。宿儺の家に誰もいないのをいいことに、トイレで宿儺が後ろから恵の股に性器を挟んで腰を振った。後ろから聞こえる荒い吐息と腰を掴まれて自由がない状態に恵も昂って、便器に向かって吐精してしまった。宿儺がまだ出してないからと、敏感になった恵の体を弄りながら、首筋や肩口に鼻を押し付けて何やら匂いを嗅いでいるのすら非日常的で、体をくねらせながら早く宿儺がイくようにと脚をキュッと締めると、宿儺がグッと腰を押し付けて射精した。
 トイレットペーパーで性器を拭いながら、これは結構ヤバいなと恵は焦った。今までの抜きあいとは何かが決定的に違う感覚だった。宿儺が行うことにただ受け身になるのは、どういう訳だかかなり緊張したし、却って体を敏感にさせた。後ろからだと何をされるのかも分からないし、宿儺をイかせるのにも一工夫いる。
「口でしてやった方がいいのか」
 先に出したのは恵だ。一応今までは先に出した方がフェラをすることになっている。
「いや、部屋に来い」
 もしかして、シックスナインをしたいのか。にやにや笑う宿儺に嘆息し、トイレットペーパーを流す。トイレの音に卑猥さを感じるなんて変な気分だった。

 部屋に入れば、宿儺は横になって恵を誘った。だから、宿儺の顔の前に股間が来るように横たわると、先程出したばかりでまだ萎えている性器を下着から取り出して口に含んだ。宿儺も同じようにしている。前立腺を会陰から刺激されては我慢出来なくなるから、恵も同じように仕返ししてやると、お互い夢中になってしゃぶった。喉の奥まで受け入れて、生臭い匂いと苦い液体を飲み込みながら、相手をイかせることばかり考えて、舌と唇と手を使う。つぅーっと裏筋を指でなぞったり、陰嚢を揉んだりしながらじゅぶじゅぶと咥えているが、向こうも同じように恵を責め立てる。堪らなくて声を漏らす代わりに宿儺の性器を頭を前後に動かして刺激してやる。
 先に出したのは恵だったが、その時に喉の奥まで突っ込んだせいか、宿儺もほぼ同時に射精した。
 ティッシュに精液を吐き出して、捨てたあとはなんとなく無言になって見つめあった。あまりこういうときに会話はしない。お互いの動きを見て、何となく察して、予測して動く。ただ、お互いの求めている事は想像がつくので間違えたり間違えられたりすることはない。
 どちらともなく、口を近付けて舌を出し、見せ合いながら絡み合う。唇をくっつけない距離で、舌先だけで戯れる。ただ、我慢できなくなって恵の方から宿儺に襲い掛かって口の奥まで舌を突っ込むと、宿儺が恵の舌をキュウッと吸い込んだ。
「あぇっ、んん! んんんッ〜!」
 気持ち良すぎて宿儺を押し倒して上から押さえつけるようにキスをする。一旦下着の中に仕舞い込んだ性器を擦りつけ合いながらキスを続ける。気持ちいいのは間違いないが、出した時の方が快楽が強い。腰を降って宿儺の性器の形を感じながら刺激してると、恵の方が先に果てた。今日は全く我慢していないせいで、恵ばかり先に出している。
 下着を脱ぎ、ベッドの端に捨てると、恵はそのまま下にずれて宿儺の性器を口に入れる。シックスナインの時とはまた角度が違うし、動きやすくなったので、口をすぼめて前後に動かしてやると宿儺が感じ入ったように「んっ…、」と声を漏らした。恵も大きい方だが、宿儺は長くて太い。それを口に入れるのは疲れるといえば疲れるのだが、これも約束なので仕方がない。
「……ッく!」
 ビュルルと恵の口に宿儺の精液が注がれる。それを一旦全て口に入れたあと、仰向けになっている宿儺の口の上から舌を出して垂らしてやる。自分の精液を宿儺は悪い笑みを浮かべながら口に迎えた。
 その日はもう一度ベッドで前から素股をしてやって、終わった。

 数年経っても二人の関係は変わらなかった。いや、行為自体はエスカレートして、今は宿儺の性器を恵の腹が受け入れている。
「ウッ! あ、あゥっ、」
 太くて長い性器を入れるのはどんなに慣れても、始めは痛い。初めて入れられた日はあまりに痛くて動かすなんてありえないと断固拒否したし、翌日はまともに歩けなかったので随分宿儺を恨んだが、今はローションを惜しまず使いまくり、何度も回数を重ねてきたのでコツは掴んでいる。
 四つん這いで後ろから入れられ、恵は自分の性器をしごきながら宿儺の動きに合わせて腰を振る。尻穴から溢れて垂れたローションを掬い取って自分の性器を擦り上げると、かなり気持ちがいい。
「アッアッ! あああっ、んく、あっ! んんん〜〜〜!!!」
「〜〜〜っ!」
 宿儺がゴム越しに吐き出したのを感じる。宿儺も恵の前立腺の震えを感じたことだろう。手がベトベトだったが、宿儺は恵の手を取り、まるでハンドクリームを塗り込むように握った。
 今もなお、学生時代のように宿儺への特別な感情があるのかどうか分からない。宿儺がそもそも恵以外を特別扱いしないから、恵の中の宿儺の存在もどんなものなのか、簡単に説明できない。
 でもまあ、唯一無二の友達なのは間違いなかった。