後ろからずぶりと外輸精管が自分の体に突き刺さったのをメグミは感じ取った。同じケースで飼われているオスのクワガタ、スクナのものだ。最近、マット上を頻繁に動きまわったり、餌の食いつきが多くなっていたからそうだろうと思っていたのだ。メグミの体も準備ができていたから、ちょうど良かったとそれを受け入れる。後ろでスクナの巨体がしっかりとメグミの体に繋がっているのを感じる。
ノコギリクワガタのスクナとメグミは、ここ数日、同じケースで飼われていた。普段は別々のケースに入っているのだが、繁殖のためにと同居ペアリングを促されたのである。スクナは相性の合わないメスを何匹もその顎で引き裂いてきた凶悪なオスだったが、メグミのことは気に入ったらしい。食われず、引き裂かれず、暫く同居した結果、本日ペアリングと相成ったわけだ。長ければ数時間ほど交尾せねばならないが、さて、どうなることやら、と他人事のようにメグミは考えた。
ペアリングは無事完了したからか、スクナが一緒に餌を食べたり、寄り添ってくるようになった。特に顕著なのがメイトガードで、しょっちゅうメグミに覆いかぶさるのだ。子孫を残したいという本能からの行動だが、このまま数日経てば、産卵する前にもう一度交尾させられるかもしれないとメグミは危機感を持っていた。何せ、産卵前に交尾を迫られれば拒絶するしかないが、スクナの誘いを拒絶することは即ち死だ。あの逞しい顎で引き裂かれずに生き残れるかどうか、メグミには分からない。飼い主がどうにかして交尾完了を察知して別のケースにうつしてくれれば問題ない。
しかし、飼い主が交尾完了に気づく前にスクナが交尾を迫ってきた。既にメグミの腹には卵がある。まだ生んでいないので、スクナに応えることは出来ない。拒絶するため、スクナの脚に噛み付くと、スクナの大顎がメグミの体を挟み込んだ。このまま暴れれば体がちぎれ、最悪は死に至るだろう。辛抱強く喧嘩をしていると、スクナが解放したので、メグミはスクナの脚を噛み切ってやった。これで動きが鈍くなって交尾を強要しないだろう。
翌日、飼い主が慌ててケースを別にしてくれたおかげで、メグミは無事産卵することが出来た。
後日、またスクナと同居させられたが、スクナは脚を噛み切ったメグミを何故か益々気に入ったらしく、すぐに体の準備を終えると交尾し、メイトガードするので、オスの気持ちなんてわからないものだな、と脚を狙いながらメグミはスクナに守られてやったのだった。
