無限

 ぼたぼたと尻からまた液体が垂れた。注がれた男の精液がまた恵の体から溢れ出してしまった。
 当たり前だ。この二日間、男は恵の尻にあろうことか性器を突っ込んで、一瞬たりとも抜くことなく犯し続けている。男の性器は何度射精しても衰えを知らないのか、いつでもギチギチと恵の体内を抉り、意識を奪う程の快楽を与えている。
 正直に言えば、恵の精神はもう限界だった。

 村から厄介払いされ、生贄として、村に覆いかぶさるように聳え立つ山の奥までやってきたのが、事の始まりだ。
 余所者だった父が死んでからというもの、恵は持ち前の頭の良さでなんとか村での生活を成立させ、十五になるまでは表面上、事を荒立てることなく生きてきた。
 だが、去年から続く凶作や天変地異の前触れかと思うような事柄が続いたことから、山に人を遣ることになった。言葉は濁されていたが、言うなれば生贄だ。村の大人連中の話し合いの結果、山に一番慣れているからという理由で恵が選ばれた。確かに、同世代の誰よりも山には詳しい。だが、それは建前で、身よりもなく、愛想もなく、賢過ぎて大人の都合のいいようにはできない恵を厄介払いしたいだけなのだ。
 そんなことにもう疲れてしまって、投げやりな気持ちで引き受けた。村の娘達は嘆き悲しんだが、数日経てば恵のことなんて忘れるだろう。
 さっさと出ていってやるさと荷物をまとめ、恵も入ったことのないような山奥にあるらしい祠へ向かう。大人しか近寄らないその祠には昔この地で暴れた大男が祀られているらしい。今ではこの地の守護をしているという話だが、恵はあまり信じていない。
 頼んだところでどうこうなるわけではないだろうなと半ば諦めていた恵は、しかし、その祠の傍に立つ大男を見て考えを改めた。人間じゃない。唯一分かるのはそれだけだ。なにせ、腕が四本もあったし、腹に口もある、目も四つある。
 大男はぴしりと固まった恵を上から下までジロジロ見て検分した後、既に知っていたのか、「いつもの捧げ物より上等だな」と笑った。
 男は恵に何一つ説明することなく、首根っこを掴み、子猫のように泉まで運ぶと、服を剥いでじゃぶじゃぶと恵を洗い始めた。その時、尻の穴に指を突っ込まれ、中を掻き出されて恵の自尊心はズタズタになったのだが、男は四本の腕を駆使して暴れる恵を押さえつけながら、隅々を洗い終えると、ぐったりしている恵の口に何かを注いだ。酒のような匂いと味で、体が温まる。ほう、と息を吐いた途端、恵の尻の穴に何かが押し込まれ、「ひィッ!」と叫んだ。
「な、なに?!」
「大人しくしていろ。お前が孕むまではこのままだ」
 男は事も無げに言い、恵の足を大きく開かせて抱き上げると、立ち上がって歩き始めた。
「いだッ、あ゛っ?! てめ、このやろう……!」
 そこで漸く恵も男の性器が自分の尻に入ってることを理解した。歩く度に揺れて中を抉られるのが痛くて、涙が出そうだった。多少の怪我ならまだしも、こんなどうしようもない痛みを与えられるなんて。一体どうして。
 その内、腹の口が舌を出して恵の萎えた性器を口に含んだ。瞬間、恵は「あん!」と甲高い声で啼いた。慌てて自分の声を抑えようとしたが、ぬるぬると動く舌が恵の性器を弄ぶのに翻弄されてしまう。先端を執拗に舌先でぐりぐりと押されたり、裏側をツゥと舐められたり、玉を転がすように触れられたら、腰が馬鹿になった。何度もビクビク震えて、男の舌の上に吐精する。
 そうしていく内に、後ろの尻穴の痛みよりも別のものがじわじわと体に広がり、恵を支配していく。
 歩くのに合わせて何度も擦り上げられ、揺さぶられて、恵は痛みとは別の快楽で泣きながら、男に縋り付いた。
 男は祠から離れた洞穴に入ると、胡座をかき、腰を落ち着けて、向き合うようにしていた恵の腰をがっしり掴み、上下に体ごと揺らし始めた。
「あっ? あっ!♡ あっ♡、はアっ!♡」
 洞穴で響く自分の声にびっくりしながらも、男にいいようにされる。何度か擦ったあと、男は恵の中で射精をした。自分が女のような扱いを受けていることは理解し始めた恵は、漸くこれで開放されると思ったが、男の性器は萎えていない。先程出した精液を潤滑油にして更に早い動きで恵の体を揺さぶり始めた。
 男は腰を掴む手とは別の手で、恵の乳首を摘んだり引っ張ったりしながら、腹の口で恵の性器をしゃぶり、大きな顔の口で恵の顔中を舐めたり、口の中を舌で犯したりした。男の大きく太く長い舌が、恵の舌を絡め取り、ぬちぬちと弄ぶだけでも腰が砕けそうになるのに、腹の口がちゅうちゅうと吸い込むのにも耐えられなくて泣きたくて仕方がなかった。次第に尻は痛みを忘れてただただ気持ちよくなって、男の動きに全てを委ね始めていた。
「ん♡、んう、あン♡……んふ……ふ…ふぁ♡……ああっ!♡」
 びゅるると男の精液が恵に注がれる。塗り込むようにしっかりと腰を回して奥へ奥へと押し込まれるのが堪らなくて、恵は体を震わせて耐えた。いや、耐えられているだろうか? 性器は最早吐き出すことを忘れて、透明な液体をダラダラ流すだけだし、頭の中は空っぽで、目の前の男の全てに注目している。腕も足も拘束されていないのに、何度も押し寄せてきた快楽で既に力が抜けて使い物にならない。
 何なんだ、この男は、と疑問を思い出したものの、恵はあまりのことの連続で、到頭意識を失った。

 ゆさゆさと揺さぶられ、断続的に下半身から快楽が全身に走ることで、恵は目覚めた。まだ男の性器と恵の尻は繋がっている。それどころか、男の出したであろう精液で腹がたぷたぷになっていて、気持ち悪いくらいだ。やめさせようと腕に力を入れようとした途端、また男が恵に精液を注いだ。恵はぷしゃあと自らの性器が快楽で粗相をしたことを感じた。あまりにも恥ずかしくて逃げ出したいのに、尻を掴まれていては身動きが取れない。粗相をした性器を腹の口がまた舐め上げるので、ひぃっと悲鳴を上げてまた恵は全身を震わせた。
「おまっ、おまえ!」
「ん?」
「なんなんだ、アッ!♡ これ――んんっ♡、やめ、あッ!♡」
 男は恵を見ると、どこからか取り出した酒を口に含むと、恵に口付けた。男の口から注がれる酒を吐き出したくても、恵は抵抗できる状態ではない。喉を通る酒の熱さに噎せるが、そのまま全て飲み干す羽目になった。
「うぇ、げほっ、あ……? あっ!♡ あァッ!♡」
 また意識が曖昧になって、ただただ気持ちよくなりたいと腰が揺らめく。違う、何なんだ、この男は。正体を確かめなければ。
 己を奮い立たせ、男の顔を両手で掴む。意外だ、と言うような驚いた顔をされたが、こっちは死活問題なのだ。このまま男の腹の上で狂い死にたくない。
「お前は何なんだ、答え――ひゃっ♡」
「思っていたより楽しめそうだな」
 舌舐めずりして、男は精液まみれの恵の尻の左右を揉みしだき始めた。ぐるぐると捏ねるような動きをしたかと思えば、ぐうっと尻穴まで広がるように引っ張ったりする。初めての感覚に恵はひいひいあえぐ事しかできない。
「や♡、なにす、ん!♡ やめ、〜〜〜ッ!♡」
「頑張れ頑張れ」
 男は上機嫌で恵の尻をパシンッと叩いた。その音と衝撃で腹の中にある男の性器を締め上げながら、恵は達した。涎が垂れているのも気にする事ができないくらい、下半身に全てを支配されている。気持ちいい。じんじんと叩かれた箇所が痛むのに、同時にもっとされたくなる。駄目だ、そんなの駄目。せめて、男の正体を知らなければ、とジタバタ暴れても、却って男の四本の腕で拘束され、身動きが取れなくなる。
「三日三晩は費やさねばならんというのに」
 ケヒッと男が笑って、何度も恵の尻を叩く。その度に全身を震わせて痛みで絶頂し、締め上げた男の性器が良いところに当たって更に達し、内側の震えでピュッピュッと出した事による射精感で気持ちよくなるというのを、何回も繰り返していく内に、恵の意識はまた途絶えた。

 次に目を覚ました時、あらぬ所から信じられないような感覚が体に響いて、恵は悲鳴を上げた。
 今まで性器と尻穴の間には何もなかったはずなのに、何かしらの穴ができている。それを男の指がぬちぬちと弄り回し、ぬぷぬぷと出し入れしていた。
「えっ、なに、なんだ? はぅっ♡」
「漸く準備が整ったな」
 何の準備というのか、分からなくて戸惑っている間も男の指は更に奥へ奥へと進んでいく。ある一点を指が掠めた時、恵は吐精することもなく、全身をビクンビクンと震わせて達した。何だ、今の。腰というより、頭に快楽が直接来た。怖い。何が自分の体に起きているのか分からない。男のことも、男の行為の目的も、こんなに感じている自分の体の事も、意識を失っていた間のことも、分からない。
 混乱して泣き始めた恵を無視して、男は入れたまま恵の体をぐるりと回した。その刺激で体から力が抜ける。
 だが、性器と尻穴の間にできた新たな穴に、何かがピッタリとあてがわれたので、気を失っていられなかった。
 下から覗いてみれば、それは正しく性器だった。今、恵を苛んでいるものとは違う、もう一本の性器があったらしい。
 いや、いやだ、と藻掻いて、硬い岩肌に爪を立てて逃げようとしても無駄だった。もう一本の性器もぐさりと恵の体内に入った。二本の性器は、男の腰の動きに合わせて何度も出入りしてはそれぞれの気持ちいいところを刺激する。特に、尻穴じゃない方は何をされても脳にクる。
 泣きじゃくりながら、口を閉じることも出来ず、涙と唾液で顔を汚す恵を男は性器で食い破ろうとしている。
 男の性器が二本とも射精した時、恵の全身の熱がカァッと燃え上がった。びゅーびゅーと注がれて溢れかえる尻穴と違い、まるで飲み干すように新たな穴から続く体内が蠢いている。自分の体なのに、勝手に動いているようで気持ち悪い。げえっと吐き出したくても、覚えてる限り何も口にしてないので、ぴちゃっと透明の液体が出ただけだった。
 何度も何度も男が精液を注ぎ込んだので、ぽっこりと膨れ上がってしまった腹を男が後ろから四つの手で撫で擦る。じわじわと温かいものが手の平から腹の中まで伝わってくるのが心地よい。まだ二つの穴には男の性器が刺さっていたが、今は動いていないので、恵も息を整える余裕ができてきた。
「お前はなかなか良い体を持っているな。俺に耐え、俺の呪いに応えたのはお前が初めてだ」
 表情は見えないが、男は大層喜んでいるらしかった。腰から背中、首までを腹の口から出た長い舌が舐めあげる。びくんっと大袈裟なまでに反応すると男が笑った。
「これで二つの性を具え持つ者ができた」
「……どう、いう……?」
 恵が質問しても男は答えなかった。ずるりと二本の性器が恵から出ていき、今度は鬼灯に形の似た、陶器のような冷たい何かで二つの穴が塞がれた。全身を布でぐるぐる巻きにされ、藁の上に寝かされる。一体全体、何がどうなっていて、この男は何者で、恵は何をされたのだろうか。
 暫くすると全身が燃えるように熱く、体の中身が痛くて、ゲエゲエと吐いてもなお気持ち悪く、楽な姿勢を取りたくても縛り付けるように巻かれた布の所為で、身動きが取れない。男はそんな恵の額にかかる前髪を掻きあげ、様子を見ているだけだった。
 何度か気を失って目覚めたあと、布を剥ぎ取られ、二つの穴に入れられていた何かも外された。
「いい仕上がりだ」
 男は恵の少し膨らんだ腹を撫でている。説明されなくても、もう恵は分かっていた。男の目的は分からないが、恵は孕んでいる。どうしてなのか、どうやってなのか、何も教えられていないし、恐らく男は話すつもりがないが、これを台無しにすれば、どのようなことになるか想像して、恵は男から逃げ出すのを諦めた。
 どうせどこに行ったって、恵は余所者扱いされるし、今のこの体ならば、普通に暮らしていくことはできない。この男の所にいるしかない。
「そういえば、名はなんという」
 男が漸く思い出したというふうに訊ねた。この男と会って、初めて会話らしい会話をするのがおかしかった。
「恵」
「お前に相応しい名だ」
 ケヒッと男は奇妙に笑う。そんな訳がない。これまでの人生でこの名の通りのことを感じたことはないし、これからもまた同じだろう。
「あんたは……?」
「昔は両面宿儺と呼ばれたな」
 それは名前ではない。だが、名乗るつもりのない男に問い詰めたところで痛い目にあうのが明白だ。
「宿儺、と呼べばいいのか」
「好きにしろ」
 宿儺は恵を抱き上げると、ゲラゲラ笑い出した。何が楽しいのか知らないが、恵は四本の腕の中で大人しくしていた。