1㍍チャレンジ

 事の始まりは、お互い仰向けになって挿入する体位(スプーン・オン・スプーンというらしい?)をした時だ。初めての体勢だったが、宿儺の腰の力強さで下から押し上げられる感覚、普通のバックや騎乗位とも違う気持ちよさ、その上で宿儺に命じられて自ら陰茎を扱いて既に何回もイっていた恵は「漏れる」と感じたものの、普通に射精してしまうだけだと思っていた。
 実際には、強烈で下半身が痺れるような快感と開放感と共に、精液とは別の液体がブシュッ!と噴水のように上がった。大体1メートルくらいまであったと宿儺が後から教えてくれた。
 射精とは違う初めての現象に宿儺が不思議そうにしていたのは何となく覚えているが、その瞬間の恵は頭が痺れるような気持ちよさに酔っていたので詳しくは覚えていない。今まで感じたことがない快楽にうっとりしていたのだ。
 無論、噴き上がった液体は重力に従い、恵の体に降りかかったらしい。宿儺はそれを再現しようと、何度も恵の体を揺さぶり、陰茎を扱いて同じ現象を繰り返した。途中から恵は意識を失っていたが、宿儺は実験の結果、潮吹きをしたと結論して、病気などではなく、ただの生理現象だということも把握したらしい。
「成分は尿と同じだ」
「……マジかよ」
 翌朝、どうやってそこまで調べたのか知らないが、わざわざ報告されて恵は頭を抱えた。あんなに気持ちがいいことなので、少し期待してしまっていたが、尿を出しているというのなら話は別だ。
 二度とゴメンだ、と言いかけて、宿儺の顔が生き生きしていることに気付いた。こういう時、恵にとって単純に良いことが起きるはずがないことは既に分かっている。
 ヒイと後退りしようとしたが、宿儺に腕を捕まれ、腰を強く抱き寄せられた。
「強い快楽を感じるとああなるらしい」
「いや、でも、汚したくねえし」
 ただでさえ宿儺とセックスした後は唾液、汗、精液、ローションなどで寝具がどろどろになる。これ以上洗濯物が増えるのは面倒だ。しかも、1メートルも噴いたということは、ベッドから飛び出すことも考えられる。幸いベッドルームはフローリングだが、マットを敷いているので、洗濯物が増えることに変わりはない。
「いくら汚してもいい。お前のあの痴態を俺に見せろ」
 宿儺はすっかり潮吹きにハマったらしい。ある意味快楽のバロメーターのようで、どれだけ恵を気持ちよくさせれたのかを視覚化できるのが良かったと言われて、恵は葛藤の末、全部宿儺が後片付けをしてくれるならと許してしまった。
 宿儺は大喜びでマットを排除し、ベッドルームの家具も移動させて、どこに潮を吹いても大丈夫なように部屋を模様替えした。いつもながら、好奇心と自分の楽しみの為の行動力が凄い。勿論、恵に手伝わせることなく、一人でやってのけたのだ。恵はただ、宿儺が整えた環境で、宿儺の与えるままに感じ、よがればいいようにされてしまった。
 退路を断たれたものの、同時に、あの快楽をパートナー公認で再度感じられるのかと思うと鈴口が疼いた。

 数日後、宿儺はベッドで膝立ちでバックを強いた。足の長さが違うから少し体勢がきつかったが、それも気持ちよさに上乗せされたのか、それとも潮吹きを期待してなのか、すぐに恵は快楽の海に溺れた。声も我慢できずに、言葉にならない叫びを上げながら、射精を何度かした後、宿儺に扱かれながら、この前のような漏れる感覚に襲われた。尻を脱力させて、尿道を迸る感覚に酔いながら、思い切り仰け反って放出する。
 宿儺が「いい眺めだ」と喜んでいるのが嬉しくて、身を捩らせてキスをした。その間も腰をヘコヘコ動かして、快楽を求めていれば、二度目の感覚が来た。
「あ、漏れるッ!」
 びゅしゃあっとまた潮を吹いたが、一度目より飛ばなかった。宿儺に褒められないかも、と思ったが、そんなのは杞憂で「よく出した」と頭を撫でられた。
「強い快楽が勢いを増させるらしい。今のは少し弱かったか」
「そんなこと……ねえけど……」
 いつも宿儺に抱かれると気持ちがいい。その気持ちよさに強いも弱いもないと思っていたが、宿儺は納得しない。
「もっとブッ飛ばせる必要があるな」
「これ以上か?」
「気付いてないだろうが、潮を吹いた時のお前の顔は実に卑猥でいい」
「ばっかじゃねえの」
 ちょっと肘で小突いてやったが、色んな相手がいた宿儺がこんなことで恵に更に夢中になってくれるなら安いものなのかもしれない。女と男も食べ尽くした宿儺は、恵の仕事に対する姿勢や才能を見て惚れてくれたらしいが、どうせならセックスでも引き止めたい。
 それに宿儺から与えられるものに間違いはない。身を委ねてしまおうと、宿儺に全てを任せることにした。
 宿儺は恵に水分を取らせて、今度はベッドに腰掛けて背面座位で後ろから恵の前立腺を宿儺の太く逞しい陰茎で刺激した。リズムよく確かな力強さで体を揺さぶられながら、恵は己の陰茎を扱く。気持ち良すぎて頭がおかしくなりそうだった。その上、宿儺が恵の陰嚢を揉むので、ビュルッと何度も射精してしまう。けれど、宿儺が待っているのは普通の射精ではなく、潮吹きだ。恵が放尿するのを期待している。ひどい男だとも思うが、あの気持ちよさを忘れられないのも事実だった。
「あっ、あ、もれ、もれるっ……!」
「見ていてやる、思い切り出せ!」
「あ、あっ! あああ!」
 びしゃぁっ! と途轍もない気持ちよさで前立腺をびくびくさせながら潮を吹く。頭が痺れそうだった。
「目測だが一メートルは行ったな」
「はあ、はあ……よかったか……?」
「この上なく」
 後ろから顎を掴まれて、上を向くと宿儺がキスをしてきた。少し喉が苦しい体勢だが、その苦しみも気持ちよさに変わる。恵がへこへことまだ体内にある宿儺の陰茎にすり寄れば、今度は宿儺がイくために、散々抱かれた。

 次の時は、宿儺がビーカーを等間隔で配置していた。ベッドから三十センチ離れた所からスタートし、およそ十センチ感覚で合計十個配置されたビーカーに、恵は嫌な予感がした。
「お前……これ……」
「一番遠くまで入れられるか挑戦だ」
「いや、おま、挑戦って、ちょっ、バッカじゃねえか」
「一番遠くまで入れたら褒美を出す。やる気が出たか?」
「それでやる気出る訳ねえだろ」
 時々この男は普段の聡明さを裏切るような子供っぽくてバカバカしいことを言い出すが、探究心の強さがそんな行為をさせるのだとは分かっている。分かっているが、これ、俺が遠くまで飛ばせなかったらどうなるんだ、と恵は疑問に思いつつベッドに乗る。
 まあいい、褒美とやらには用がある。どうせ宿儺の手管で一番向こうまでなら飛ぶだろう。百二十センチ向こうのビーカーをベッドから見る。……本当に飛ぶだろうか。
 ビーカーを視界に入れつつ、宿儺に翻弄されながら、恵はあられもない声を出す。乳首を摘まれ、ひっぱられて仰け反れば、カリを握り込まれ、強い刺激を与えられる。悶え苦しみながらも、与えられる全てが気持ちいい。向かい合わせで抱き合いながら、後ろから回された手で会陰をぐりぐりと押されて、何も入れられてないのにビュッと精液を出した。だらだらと流れる白い液体を陰茎全体に塗り込むように揉まれて、しょろっと漏らしたが、宿儺は全然気にしていない。
「お前はいつもいい顔をする」と褒めるように顔全体にキスを降らせる。ちゅっちゅっと繰り返されるバードキスにうっとりしていたら、体の向きを変えられて、いよいよビーカーに向き合う羽目になった。
「さて、どこまで行くか。楽しみだな、伏黒恵」
 後ろから腸内を抉るような腰使いと、気持ちよすぎて痛いほどの陰茎の扱きで、恵を追い詰めていく。恵が感じる全てを把握されている今、抵抗など無意味だし、頭を馬鹿にしたほうがいいのは分かりきっている。宿儺のリズムに合わせて、徐々に高みに登っていくのを感じる。あと少し、あ、だめだ、あ、ああ、あああ!
「すくなあっ!」
「出せ! 俺に見せろ!」
 宿儺の高笑いと共に、今までより強い快感が襲ってきて、恵は頭が真っ白になる。弛緩した尻から宿儺の陰茎がずるりと抜ける感覚にさえ悦楽を覚えて、んっと声を漏らした。それなりに向こうに飛んだのではないだろうか、と思うくらい尿道を駆ける感覚がすごく気持ちよかった。
「よしよし、よくやった……と言ってやりたいが、惜しかったなァ」
 前のめりで倒れそうになる恵を宿儺が後ろから抱きしめて、顎を掴み、前を見せた。一番遠い百二十センチにぎりぎり届いていないらしいが、今の恵にはそれが正しい情報なのかは分からない。気持ちよすぎてふわふわしているのに、なんで頭を使わせるようなことを語りかけるのか。
「もう一度だ」
 恵にペットボトルの水を含ませて、宿儺は体のあちこちに手を這わす。快感の海から恵を浮上させないためだろう。火照った体に冷たい水は心地よく、それとは別に熱い大きな手が恵の性感を高めている。ギャップが大きすぎて、笑うしかない。くすくすと笑って身を捩りながら、宿儺に口付ける。休憩は終わりだ。
 二回目はベッドの上に立ち上がって背面で駅弁をされた。恵の膝を抱える宿儺の腕に片手で縋り付きながら、もう一方の手で自身の陰茎を扱く。宿儺は恵の両足を抱えるのに両手を使っているから、恵が自分で陰茎に刺激を与えるしかない。
「ここからならお前も一番遠くまで飛ばせるだろう?」
 にやにやと宿儺が笑っているだろうことは想像できる。
「あ、やっ、あ、だめ、あっ! ちが、ちがうの、でるッ」
「潮ではなく精液か? それでも構わんぞ」
 許可が出た、と思った瞬間、精液がびゅるるっと勢いよく出る。勿論、潮ほど遠くまで飛ばない。
「まだ快楽が足りないか」
「まっ、まて、あっああ、イってる! イってるの! ああっ!」
 びくびくと前立腺の震えが止まらない。宿儺も感じているはずなのに、全然止まってくれない。それどころかもっと鋭いストロークで恵の体を突き上げる。両手で宿儺の腕にしがみつかないと振り落とされそうで怖いくらいだ。ベッドの上という不安定な場所なのも相まって、気持ちよさを追いかけることだけに集中できない。
「手は休めるな。安心しろ、お前を落とすことなどない」
「ま、ああっ、ぜっ――ぜったい、おと、おとすなよ、あっ!」
「任せろ。お前は思う存分快楽に溺れて俺にその様を見せてみろ」
 宿儺が恵の耳をかじる。だめだ、宿儺の声は前立腺に響く。甘くて、しびれるように色っぽい声に耳が犯される。
「あ、で、でるっ! でるっ!」
 こんなのを一度体験したらもう二度と普通のセックスでは満足できないんじゃないかという快楽を経て、恵は仰け反り、潮を吹いた。この尿を漏らしてしまう感覚と、尿道を突き抜ける勢いが羞恥心も何もかも超えて、忘れられなくなる。
 宿儺が恵の中に精液を注ぐのを感じながら、へなへなと後ろに凭れ掛かる。どくどくと体内を宿儺で満たされる気持ちよさにうっとりしていたら、「褒美を出さねば」と宿儺が頬を寄せてくれた。頭を撫でてほしいが、未だに背面駅弁のままだ。
「ど、こまで、飛んだんだ……?」
「百三十は飛んだな。よくやった」
「……まじかよ」
 ゆっくりと宿儺の陰茎がもったいぶるように恵の尻から抜かれて、漸く二人はベッドに座る。といっても恵は宿儺の膝の上で横抱きにされた。気持ちよすぎて頭が回っていない恵の視線をビーカーに向けさせながら、宿儺は上機嫌に「今までで一番お前の前立腺が震えるのを感じた」と褒めている。
「それで? 褒美は何を望む」
 邪気のない笑顔の宿儺という滅多に見れない光景に、最早褒美をもらったのと同じではなかろうかとも思いつつ、「前から」と恵は一言答えた。
「ん? もう一度言ってみろ」
「……最近バックばっかじゃねえか」
 宿儺の機嫌が更に上がっていく気配を感じる。喜んでもらえたのならありがたいが、あまりテンションを上げさせると恵の身が持たないかもしれない。でもやっぱり、後ろばっかりとはいかがなものだろうか。いや、前からヤッて潮を吹いた時の悲惨さは考えたくないことではあったが。
「……塞ぐの、用意してるから、つけて、前から……やれよ」
「ほう? お前自ら?」
  ベッドサイドの引き出しの奥に入れていた五センチほどの金属製の尿道プラグを見せると、宿儺の笑顔が輝いた。馬鹿じゃないのか、と顔を合わせられないまま、差し出すと、手元で入念に検分される。
「これは初めて使うが、いけるのか?」
「………………ちょっと、だけだが、練習した」
「ふむ、ではその成果を見せてもらおうか」
 今までに見たことがないくらいのワクワクとした顔で宿儺が近寄ってくる。顔中にキスされ、唇も舌も絡ませながら、恵の陰茎を勃たせる。既に何度もイって馬鹿になってるので、少しずつプラグを入れていくと、宿儺がキスをやめて、尿道にずぶすぶと入っていくプラグをじっと観察した。あまりにも真剣に見つめられて、恵の興奮が高まっていく。
 見られてる、宿儺に。少しも見逃さないと言わんばかりに見つめられている。食いつきがすごすぎて、どうしようかと思うくらいだ。プラグが全て入ってしまうと、プラグの端についているリングがぷらぷらと揺れている。これを引っ張られて一気に引きずり出されたら多分やばいことになる。
「いい景色だ。お前の体にシルバーはよく似合う」
「ちょ、こういう時に言うセリフじゃねえだろ」
「指輪なら贈ったろう? 今度はこちらか。実にいい」
 押し倒されて、大胸筋を揉まれる。宿儺の激しい興奮を表すように物凄い力で揉みしだかれて、恵は言葉を忘れて喘ぐ。乳首をむしゃぶり付かれて、それだけでイきそうになるが、尿道プラグが射精も潮吹きも阻む。空イキするしかない。
 でも、どうせなら挿れられてから、と思っていたら、宿儺が我慢できなくなったのか、驚くほどの勢いで恵に挿入した。強く太く固い陰茎が、前から挿入されるのは久しぶりではなかろうか。宿儺の快楽に耐える表情が、あまりにもかっこいい。最近は後ろばっかりだったから、妙に新鮮に感じられて、恵は悲鳴を上げそうになる。早く恵のナカでイってほしい。射精した瞬間の、解放された無防備な顔が見たい。
 宿儺の頬に手を伸ばして、見つめ合うようにこちらに向かせると、宿儺はとても満足げに笑う。
「そんなに見られたいのか?」
「ちが、おれ、おれがみたいっ、あっ!」
 宿儺が恵のナカで大きくなる。喜んでもらえたのか、と嬉しくなってキスをする。呼吸を奪い合うようなキスを夢中になってしていたが、キスをしていたら宿儺のイく顔が見れない。渋々顔を離して、尻と腹に力を入れる。
「イけ、イけよ、な? あ、ああっはっ! あ!」
 思い切り腹の奥まで犯すようにえぐられて、恵がギュッと尻を締めると、宿儺が思い切り恵のナカで射精した。久しぶりに見る宿儺のイった顔はやはりよかった。何よりかっこよくて、男らしくて、惚れ惚れする。心臓が痛くなりすぎて死にそうなくらいだ。
「ふむ、真正面が一番いい」
「だろ?」
 恵は宿儺に抱きついて、思い切りキスをした。

 結局、潮吹きチャレンジ自体は頻度が減ったが、道具を使うことが増えたのは流石に誤算だった。宿儺が楽しければ別にいいか、とすっかり絆された恵は今日も使用済みの道具をしっかり洗いながら諦めるのだった。

参考文献:TENGA Healthcare,「男の潮吹き」の真実 ~被験者が語る潮吹きのやり方~, 2021.06.30, https://tengahealthcare.com/column/post-1764/