色々な距離がある宿伏
(現パロ / 遠距離恋愛かつ年齢差十歳かつ身長差1㍍な宿伏)
恵が仕事を辞めて結婚を機に仙台へ移ると聞き、悠仁は長かったなあとしみじみこの十年を噛み締めた。大変長かった。本人等が一番そう思っているだろうが、悠仁にとっても長い年月だったのだ。振り返れば思い出の数々……いやまあ今では笑えるが、当時は散々だった。
「伏黒の結婚相手、あんた知ってんの?」
東京の大学で知り合った野薔薇は恵の結婚相手を知らない。
「うちの弟。伏黒さあ、遠恋してたんよ。東京と仙台で」
「へー? 仕事何してんのよ」
「無職。つーかこの前成人式」
野薔薇は一旦固まった。そうだろうそうだろう、と悠仁は頷く。
こちとらアラサーどころかジャストサーティー。十歳年下の成人したての男と結婚するような奴には思われない恵が結婚した理由は、成人したら結婚してくれと弟が四年前にプロポーズしたからだ。つまりそれを恵が受理した時、弟はまだ高校生だった。もっとやばい。一番やばいのは、十歳になった弟が悠仁の帰省に付き合って偶々仙台に来ていた恵に一目惚れしたことと、恵も一回り近く年下だと知らずに絆されてしまったことだ。実年齢を知った時には「未成年に手を出してしまった」とやけ酒していた。
さて、何故恵が十歳の弟を成人済みと思い込んだのか、その説明もしなければならない。
「うちの弟――宿儺ってんだけど、身長二.七メートルあるんよ」
「は? マ?」
「マ。巨人だろ? なんか生まれた時は普通サイズだったのに十歳で百九十あったし、老け顔だしマセてるから、伏黒はアイツのこと俺の兄貴だと思ったらしい」
「アンタ、童顔だしねえ」
「ほっとけ。まあ、頭も回るからな、伏黒とは話が合うみたいで、なんかよく喋ってんなあと思ってたらさ、宿儺が高校上がった時に付き合ってるの言われて飛び上がったわけ」
「どれに? 伏黒が十も下の男と付き合ってること? 弟が自分の友達に手ぇ出したこと?」
「全部。しかも伏黒が買った指輪を二人共右手の薬指に付けてたんだぞ。本気なんだってマジびびった」
「へー! あの伏黒が!」
野薔薇が驚くのも無理はないと思う。ただ、恵も宿儺の年齢を知ったのは付き合ってからだった。宿儺が弟であることはすぐにバレたが、年齢を誰も言わなかったので年子と思われており、尚且東京と仙台の遠距離だったので出会った当初は小学生だったことなど知られなかったのだ。
そして実年齢を知った時にはもう手遅れで、今更別れられないと泥酔状態で泣き言を言われ、悠仁は吃驚したのである。あの巨人とそこまで親しい仲になっていたとは。
十も下の癖に宿儺は兄を馬鹿にし蔑みその巨体ゆえの威圧感を利用して他者を屈服させるのが好きな最悪の性格なので、こいつ、どうやって生きていくつもりなんだろうと思っていたら、兄より先に結婚の約束を取り付けていた。ドッキリ企画を疑ったものだ。
「伏黒が今の会社入ったのも、若い内に荒稼ぎして宿儺と結婚した時に住む家を建てるための資金を貯めるのが目的だったらしいんよ」
「げえっ?! 二十代で年収一千万超えるけどやたら激務ってやつでしょ?」
「過労死ライン超えてたよ。でも、宿儺が不自由なく住める家建てるってなったらさあ、金めっちゃかかんの」
「アイツ、愛に生きる男だったわけか」
「そーゆわんでくれる? うちの弟のせいなんすけど。恥ずいわ」
しかも驚きなのが、恵の同意を得て宿儺がその金の一部を株で増やせるようにアドバイスしていたことだ。七海に聞いたらあまり褒められたことではないので口外しないようにと言われ(恵の代わりに宿儺が取引をしてたら一発アウトらしい)、聞かなかったことにしてくれたが、色んな意味で自分の知らない世界だなあとしみじみ思ったものだ。
「結婚前から伏黒名義で家建ててたから今引越作業中らしい。仕事の引き継ぎ終わったら仙台で就活するってさ」
「ま、幸せならいいんじゃない?」
野薔薇の言うとおり幸せならいいのだが、悠仁は兄として友として二人に振り回されてきたので(本人等にとっても不本意なことらしいが)、あれやこれやと言いたいことがたくさんある。
「釘崎さあ、伏黒と宿儺のエピソード聞いてくんね? 今まで黙ってたけどめっちゃ言いたいことたくさんあるんよ」
「面白そうじゃん、全部吐け」
その夜、野薔薇は恵の意外すぎる一面を一通り聞いて「キャパオーバーで腹が痛い」と笑い死んだ。
エピソード抜粋
- 高身長過ぎて他人と一メートル程の身長差が必ずあるので、足元で何を言われても全然聞こえないし全部無視してきたのに、恵の話を聞きたくて、話す時は必ずしゃがむか椅子に座っていたのを恵が気にして、インカムを購入し、日常は常にそれで会話をしている。全部筒抜け。独り言などあってないようなもの。お互い気にしていない(慣れた)。
- 宿儺と歩くと平均身長と平均体重の恵が華奢な女の子みたいに見えるのが恵の悩み。どうせ交通機関や公共施設を利用できるサイズではないので、基本お家デートにすることで悩みを無視している。
- 普段は「許可なく見上げるな」と他人に見られるのを好まないくせに、恵の上目遣いには優しいし、何なら視線の高さを合わせようとする(宿儺がしゃがむか恵を抱き上げるか)
- クソ忙しくて過労死ラインだったのにこまめに連絡を取り合い、中々移動できない宿儺にかわり、恵の方がしょっちゅう仙台に行っていたので(悠仁は正月しか帰らないのに)、いつの間にか悠仁の知らないところで家族公認の関係になっていた。
- 出掛けてる時に宿儺の一歩がデカすぎて恵が早足になると、宿儺がお姫様抱っこしようとするので全力で抵抗するけど、恥ずかしいだけで嫌じゃないらしい。

