Twitter(ワンライ)まとめ - 3/7

大切

(原作軸)
何度見ても頭がおかしくなる。足がもげた筈なのに、瞬きする間に足が生えている。どれほど凶暴な呪霊もどれほど凶悪な呪詛師も、伏黒恵には傷一つ負わせることができない。いや、正確には傷付けてもすぐに完治させられる。血が流れるより早く傷口が塞がる。伏黒は別に反転術式を習得した訳ではない。伏黒の体に纏わりついているモノが原因である。
東京が崩壊して日本が混乱に陥って暫く経った頃、伏黒は本人の意志ではないものによって宿儺の指を食った。瞬間、虎杖の体から宿儺の呪力が溢れ出し、伏黒の口の中に入っていった。以来、虎杖は宿儺の器でなくなり、伏黒は宿儺の檻になった。
しかしながら、伏黒の体は猛毒には耐えられない。伏黒の体は毒によってどろどろに腐り溶けるはずだった。実際、一瞬だけ毒が回って肌が壊死するのを虎杖は見たが、宿儺の呪力が全て注ぎ込まれたあとは、全くいつも通りになっていた。五条曰く、特級呪物の呪力は並大抵の人間には耐えられないので、宿儺が伏黒の死を止めるべく反転術式で癒やし続けているらしい。
伏黒は眠る度に夢の中で宿儺と話をしているそうだ。何故助けるのか、虎杖の体に置いてきた指はどうなっているのか尋ねても、宿儺は何も答えないという。以前、宿儺は伏黒にしてもらいたいことがあると言って、満身創痍だった伏黒を治療している。だが、ここまでして伏黒の命を繋ぎ止めようとするとは思わなかった。
不安要素しかないから殺してくれと伏黒は五条に嘆願した。上層部もそれを推奨した。しかし、五条でも乙骨でも、結果は変わらず、伏黒は死ななかった。無下限術式ほどでないにしろ、かなり頑丈なバリアで一切の攻撃を無効化された。
「宿儺は余程恵を生かしたいらしいね」
なんで? と虎杖と伏黒に尋ねられたが、二人共心当たりはなかった。
「呪いの王に大切にされてる気分はどう?」
「最悪です」
伏黒は心臓の辺りに触れた。宿儺は虎杖の体にいた頃とは違い、全然目や口を表層に出してこない。反転術式で手一杯なのかもね、と五条は言う。
だからといって、捨て身の戦い方を選ばないでほしかった。指が飛んでも、腕が千切れても、心臓が貫かれても、頭を潰されても、伏黒は立ち所に元の体に戻る。それを利用して先陣を切り、どんなに欠損しても気にせず立ち向かう。そうじゃねえだろ。虎杖と釘崎の二人で叱った。
「悪い、俺は死にたいんだ」
伏黒は二人と目を合わさなかった。元より最低限の人付き合いしかない伏黒は更に交流を狭め、特級術師か、伊地知としか連絡を取らなくなった。
「なんで自分みたいなのが理不尽に生き続けるのか理解できないって部屋で首切ってた」
五条が淡々と言った。勿論宿儺が癒やしたので伏黒は生きている。伏黒の首には何も残っておらず、ただ部屋が汚れただけだった。
「でもねえ、もう手遅れだよ。悠仁と違って、恵は寝ても覚めても宿儺の呪力が体に染み付いて、細胞一つ一つまでが宿儺によって管理されてる。宿儺の呪力が尽きるまで、恵は死ねない」
千年分の呪力がいつ尽きるのか。誰にも分からない。ただ、伏黒が生きる事を望む日はもう来ないのだろう。

1